ふたたび
朝起きて、私はゆっくりと目を開いて窓から入ってくる太陽の光りに一旦目を閉じて開き、窓に顔を向ける。
雪は昨日よりかはちらちらと降っていて、私は起き上がってユリアラに挨拶してから外に出た。
輝く白銀の世界は私の心を癒すようで、暖かくするようで、だけど寂しくもあり物悲しい。
私はこの綺麗ではない真っ白で白銀な世界をちょっと前に見た気がするけれど、それがどこだか分からない。
口を動かして声を出そうと試みてみた。
だけど、出たのは掠り声。
でも、掠り声でも私の声であることには変わりなくて、必死に出してみた。
朝早いからなのか人は少なくて私の搾り出すような掠れた声しか響いてないような気がして、知らない人からすれば何をしているのか不思議で仕方ないんだろう。
「……アリア?」
「…!じゅ…」
必死になっていたため気付かなかった私は、思い切り振り向いてジューダスの名前を口に出そうとした時最初の言葉だけが出て来た、それはいつも私が出していた声だった。
私の声にジューダスは目を見開いて驚いている様子で、私は説明しようと口を開く。
「こ、……で…、び……の、…」
「…何を言っているかわからん。」
途中で声が出たり出なかったりの繰り返しでなかなか伝わらないもどかしさに急いで伝えたくて喉元に手を当てて出てくれと念じながら口を動かす。
必死な私に伝わりたいことが伝わったのかそばに来て口に手をかぶせて黙れと小さく呟いたジューダスに私は素直に黙った。
それと同時に感じる喉の痛みに、私は我慢した。
「…確かに今まで話せなかったのは演技ではないと分かった。だが今出た声は、お前自身も信じられないんだな?」
「…。」
「そうか…。」
ジューダスの問いに頷いてみせれば、納得したようにジューダスは手を離してそのまま宿に戻っていく。
ジューダスの意図が分からないまま私は後を追い掛けるようについていけば、さっきの事を気にしていないかのようにカイルくん達を起こして出発すると言い出した。
なかなか起きないカイルくんにジューダスは今にも切り掛かりそうになったりリアラは呆れて何もする気になれないように眺めているだけで、必死なのはロニくらいだった。
やっと起きてくれたカイルくんを引きずるようにしながらスノーフリアを後にした。
雪道はそんなに険しくなくて、案外早めにハイデルベルグに着いた。
途中でカイルくんは氷柱のみたいな鼻水を作っていたりリアラがくしゃみしちゃってカイルくんが自分のローブを差し出してロニに怒られたりしたけれど、楽しかった私はハイデルベルグに着いてから博物館があると聞いて行きたくなった。
城の前で別れて私は博物館に入る。
そこは沢山の本や作り物で埋め尽くされていて、どれから見てみようか悩んだ。
そこで私はふと天地戦争の歴史と書かれた書物が気になって手にとって読んでみた。