おいしい
「……おい、大丈夫なのか。」
起き上がって呆然としている私に、さっきまで驚いていたような表情から変わって落ち着いたようにそう私に声をかけてくれた。
私は暫く手元を眺めてからゆっくり頷く。
相変わらず声は出ない。
夢なのか現実なのか分からない夢を見ていて、どうしてあそこで声が出せたのかが不思議で仕方なかった。
ふと私は思い出して自分の服装を見るといつもの格好じゃなくて首を傾げさせていたら突然ジューダスに『馬鹿か、お前は。』と言われてしまった。
「自分が何をしたか、反省しろ。丸一日眠っていたんだぞ。」
「……。」
「死んでもいいなんて、思うな。」
その言葉は今の私にとってどうしても胸をえぐるものでしかなくて、俯いて自分の過ちに反省しか出来ない。
私はどうするべきか考えていたらカイルくんとカイルくんに似ていてでもどこか違う女性が来て朝ごはんだと伝えてくれた。
皆で囲んで朝ごはんを食べている時に女性はカイルくんのお父さんの妹のリリスさんと言うらしい。
ということはカイルくんのおばさんになる、私は綺麗な人がおばさんと呼ばれているのに不思議に思ったけれどそれが人というものなんだとまとめた。
おいしいご飯はマーボーカレーやリーネ村で採れたての野菜のサラダなど、とても美味しかった。
リーネ村は、後にユリアラから聞いてとても穏やかで小さく田舎らしい。
私からすればここも一つの広い世界で出会えた場所なんだと思う。
やっぱり、世界はとても広いんだとわかる。
ふと私は皆が何かの話題で楽しく話しているのをじっと眺めながら少し、悲しくなった。
会話に、参加したい。
だけどそれは叶わないからただ見つめて、楽しそうにするだけ。
暫くして、皆のお皿は空っぽになってリリスさんが片付け始めたのを、私は立ち上がって手伝った。
「あら、ありがとうアリア。」
お手伝いをして私の心は温かくなる。
確か、前の場所でも片付けだけは手伝っていた。
外は、窓の外しか知らなかったけれど。
片付けも終わって、リアラも起きたことで出発することになった。
リリスさんにお礼を言って私達はリーネ村を後にした。
村の外の緑の世界に踏み出して、再び私達は目的のファンダリアに向かう為に進んだ。
進んでいる時、ユリアラが話し掛けてくれたので私は皆より後ろに歩きながらお喋りをした。
私が眠っている間、リアラが力を使って船を浮かせて皆を守ったことやそのあと倒れて私と同じように眠っていたこと。
そして何より、ジューダスがユリアラとお話が出来たことに、私は驚いた。
前を歩く皆の中のジューダスの背中を眺めながら不思議に思った。
ユリアラ曰く、ユリアラ達みたいなソーディアンの声は普通の人には聞こえないらしくて、聞こえるということはジューダスもソーディアン持ちかもしれないということだった。
私はジューダスの腰に下がっている剣を見てみるけれど、それは普通の剣で。
今の自分の脳では理解出来ないことが増えて頭が痛くなったような気がした。