あなたの為に | ナノ
ふなたび





港に着いてカイルくんが船員さんだと思われる人に近付いて話しているのを少し遠めから眺めていたらジューダスが一人離れていくのが視界にうつってジューダスを見ると海岸沿いに立って果てしなく続くような、広い海を眺めていた。


そっと隣に立てば、ちらりと私を見てまた海に目を向けた。



「……お前は…」


「…?」



ぽつりとジューダスはそう言って、続きをなかなか言わないでただ海を眺めるのみで私はジューダスの方を見る。

それでも、ジューダスは口を開かなかった。

私が声を出したところで、何も変わらないと考えて声が出ないと思い出す。



「お前は…人なのか?」



ジューダスのいきなりのその問いに私は視線を足元にやってからジューダスを見遣れば、ずっと私を見ていたようで仮面の向こう側の瞳から私を見据えている。

ジューダスの瞳は優しいようで、でも警戒心が強いのが見えた気がして体が微かに震えて目を逸らした。


人かどうかの質問に答えるべきかどうか、首を横か縦に動かせばいいだけなのにそれが出来ない。

私の中にいるもう一人の私が無視をしろと言っているような気がしてならなくて、ゆっくりジューダスを見て優しく小さく微笑めば軽く目を見開かれた。

今は答えられない、それが今の私の答えでしかないから。

気付いてもらえたかどうかはわからない、でも伝わればいいなと思う。



「……そうか。」



たった少しの行動で分かってくれたかは分からない、だけどそれだけで言葉を返してくれるジューダスが本当は凄く優しいんじゃないかと私は思う。

その時カイルくんが船に乗ろうと言って、私はジューダスの隣に立って少し微笑んでからカイルくん達の元に走って行く。

ジューダスと何を話していたのか聞かれたけれど首を横に振ってから船を眺める。

皆乗り込んで行くのを見てまだ私は船を眺めて考えた。

人はすごいものを作るんだなあ、と。


ロニに呼ばれてすぐに乗り込めば船が動き出す。

まず部屋に案内されておとなしくしていたけれど、カイルくんは待ちきれないと言わんばかり先に出て行ってしまったリアラを追い掛けに行ったあとロニも『ナンパだっ!』と言いながら出て行き、暫くしてジューダスも出て行ってしまった。


残された部屋で突然ユリアラが『やべえ…船ってやべえ…!』と騒ぎ出した。

聞いたらユリアラは船が初めてらしく、浮かれているみたいで私も初めてだから少しウキウキしていたりする。

それに、船に乗り込んでからなんだかしょっぱい空気がするのはなんでだろう。





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