しょっぱい
「アリア、皆と話し合った結果なんだけど…。」
「クレスタに戻ってもらって、ルーティさんと…」
朝、目覚めたばかりの私にいつもと違って真剣な二人の表情に胸が苦しくなった。
やっぱり私は帰らなきゃいけない、でもそれを受け入れたくなくて思い切り首を振って嫌だと訴えた。
でも引き下がる二人じゃないから。
「アリア、怪我してるからこれ以上は…。」
「っ…!」
尚も言う二人、私は諦めないで首を振った。
帰りたくない、そんなんじゃない、違う違う。
私はただ役に立ちたい、自分を探したい、立ち止まりたくない、世界を見たい、知りたい、行きたい、生きていたい。
そう伝えたくても出来ないから、出ない声は声じゃなくまるで口からただ息を吐き出しているようなものにしかならなかった。
でも、それでもこれだけは言いたかった。
行きたい。
「……アリア、あなたの気持ちは分かっているわ。でも今怪我をしてるじゃない。だから、無理だけは…。」
私の声じゃないものを聞いて驚いた皆は口を開くことが出来なかったが、リアラがそれでも私を帰らせようとした時カイルくんが頷いて『分かった。』と言って笑顔で答えてくれた。
「アリアも、一緒に行こう!」
「カ、カイル…?でも昨日は…。」
「そうだぜカイル!また怪我させたら危ないって、昨日話したじゃねえか!」
「うん、だけどさ。」
そこで言葉を切ったカイルくんは私に向き合いながら『きっと何かあるんだよ。』と言って微笑んだ。
カイルくんの言葉にジューダス以外、もちろん私もきょとんとした表情で見詰めた。
ジューダスは呆れたような表情で後ろからただ話しを聞いているだけ。
「何か…てなんだよ。」
「うーん、わかんないけどさ。アリアが俺らの家に来てからなんかある気がするんだ。」
『きっと冒険に大事な何かが!』と語るカイルくんの周りだけ妙に風が吹いているようで髪が少し揺れていたように見えたけど、それはきっと気のせいだと思う。
「とりあえず、冒険の続きだ!」
「…ほんと、気楽でいいねえ。」
「ふふ、カイルったら…。」
カイルくんの言葉に呆れながらロニに可愛らしく笑うリアラの姿に私は少し追い付けないでいたらジューダスがぼそりと私に『旅について来ても良いと言う事だ。』と呟きながら伝えて来て思わずじっと見詰めていたら睨まれてしまった。
そしてこれから向かう場所はアイグレッテ港で、船に乗り次の目的地まで行くということだった。
ここから近いということで早速カイルくんが走りながら先に行くのを見届けていたら私より少し後ろに歩いていたジューダスが少し嫌そうな雰囲気を出していたのは気のせいだと思う。