あなたの為に | ナノ
ひとりごと




その後私たちはまず宿で休憩することになって、皆で宿に向かう。

部屋を案内され、皆それぞれの事をし始めたので私はそっと部屋から出て人が少なくて、あまり目立たない場所を探した。

近くの階段を少し上って座り込み、行き交う人々を眺めた。


平和、というのはこういうことを言うんだろう。

だけどここはどこか違うと思う自分が居て、でも何かが分からなくて、首を傾げて人を見つめては悩む。

ふとその時こちらに向かう黒い服を着たその人は私の前まで来て立ち止まったのを合図のように少し見上げるように顔を上げると、見下すようにジューダスが私を見ていた。



「…ここで何をしている。」


「…。」



質問をしてきた彼に私首を横に振ってなんでもないという風に示せば分かったのか小さく『そうか。』と言って、そのまま宿の方へ進んで行ってしまった。

背中の方で『意味分かんねーっ。』と吐き捨てるように言うユリアラに私は小さく笑うしかできなかった。

その時ユリアラが足を心配してくれて、私はそれで足の事を思い出してどんどん痛みが蘇り暑い訳でも冷や汗でもない汗が流れた。

それによって私はその場から動けず、誰かに助けを求めようにも声は出ない。

どうしようどうしようとしていたらいつの間にか日が沈み、人も少なくなってきた。

ユリアラは自分のせいだと言っていたけれど私は首を横に振って否定した。

忘れていた自分がいけないし、今更になって痛み出した足も悪い。

でもそれ以前に怪我した自分が一番悪いのだけれども。


その時こちらに向かって走って来る人影が見えて近付いてくる度にそれが誰だか分かり立ち上がるが、痛みでまた座り込んでしまった。



「アリア!…ったく、ずっと戻って来ねえから迷子にでもなったかと思ったじゃねえか。」



『迷子になるにしては近いしよ。』と腰に手をつきながら怒ることもせず言う人物に口の動きだけでありがとうを伝える。

私を探しに来てくれたのはロニだった。

私が戻れなかった事を伝えるべく足を指し示すと何故かすぐに私を横抱きにして宿へと一直線に帰って無理矢理手当てを受けられた。

その後ちょっと叱られたけれどあまり時間は掛けてられなくて、明日には出発みたいでもしかしたら私をクレスタに帰してしまうかもしれないという話を聞いた。


ロニとカイルくんは優しいから、私に無理はさせたくないのかなと思う。

だけど、じゃあ私がここにいる意味がなくなっちゃうから。

二人の話の内容はこれからウッドロウ王という人に会いに行くらしく、少し長旅にみたいでどこに通って行くか話し合いながらだった。

私は話せないからその場から離れてベランダに出て、風にあたった。


私は役立たずだね、なんて心で呟けばユリアラが反応するだなんて考えて、でも元々が一人だったからどうにもならなくて悲しくなってきた。

反応なんてしなくて構わない、ただ私は本当は寂しいだけなんだ。


そう気付いてしまえば片方の目からは我慢出来なくなったのか一筋の涙が流れた。





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