あたらしく
外を出て、さっきの神殿入口の所に行けば、皆がいた。
「…勝手にしろ、それじゃあな。」
今にも去っていきそうなジューダスの腕をカイルくんは掴んで引き止めた。
何か説得させようとしているようでその光景をただ眺めていたら、入口付近にいた神官たちが来て『怪しい奴を見なかったか』と聞いてきたのに、ジューダス以外は迷ったと言い訳を言った。
すると怪しく思った神官はジューダスを問い詰めようとした時ロニがすぐに嘘をついた。
みんなそれに合わせてなんとかその場は逃れられた。
「…なんで僕を仲間なんて嘘をついた…また面倒事に巻き込まれるかもしれないのに…。」
「そんなの関係ないよ、だってジューダスはもうオレたちの仲間だもん!」
「僕は仲間になるなんて一言も…!」
「ならすぐにでも断ることもできたはずだぜ?なんでそれをしなかったんだ?」
なおも反論しようとするジューダスに私はそっと近づいてじっと瞳を見つめた。
するとみんなは私の行動に驚いて黙って、行く末を見守っていた。
私は話すこともできないからこれしかできない、これが一番効果的な気がする。
私はユリアラをジューダスに差し出した時、皆キョトンとしていた。
「…どういうつもりだ。」
「…。」
もしこれを渡せば私は体でジューダスと戦うことになり、不利になる。
ようは私が裏切ればすぐに私を斬ることができるという訳なんだけど、話せないから剣を差し出す。
私の行動が分からないのか、それとも少しは認めてくれたのか手を差し出してきた。
剣を受け取るのかと思い手に渡そうとしたら『違う』と言われ、ジューダスをじっと見詰める。
「何が言いたいのか、伝えてくれ。そうでなければ分からないだろ。」
分かれ、と言いたげな目を向けてきたジューダスに私はやっと理解してユリアラを抱えるようにしながらジューダスの手にそっと文字を書いていく。
私がいつ、裏切って殺されてもいいように、私の剣を預けるんです。
「…それでもお前には格闘の技を習得しているだろう。そうしたところで変わらない。」
変わる、すごく変わります。だって剣は私の…。
「…、どうした。」
そこまで書いて私は一旦言葉に困った。
家族、にしては出会いは浅いし…でも、そんなものに浅い深いは関係ない気がするし、何より私にはユリアラみたいな性格が好きだ。
やっと私はジューダスの手に『家族』と文字を綴った時に微かに目が見開いたような気がする。
「……家族…。」
書いたものを復唱するように呟いたジューダスに私は頷くと同時に少しユリアラを抱きしめる力を込めた。
出会って間もない、それは仕方ない。
だけど私は、ユリアラを家族だと思いたかった。
それは多分、私の…前の私のことが原因なんだろうけれど。
「……ふん、そんなもの預からなくとも僕はお前に負けはしない。」
『だから、持っていろ。』そう小さく言った声は少し柔らかさを帯びていた気がするけれど、多分勘違いだと思い込んだ。
私に対して優しくなることはないと思うから。
私とジューダスの行動を見守っていたカイルくん達はホッとしたのと同時にカイルくんが『出発だ!』と右手を上に突き上げるようにしながら元気にそう言った。
Title「音に混ざった残像」by たとえば僕が