うすれる
「お前がフィリア・フィリスだな?」
そう言った男、バルバトスは自分の足元に転がる小さな少女を足でフィリアの方に蹴飛ばしてそう聞いて尋常じゃないボロボロの斧を向ける。
フィリアは斬られた少女、アリアを抱き抱えて守るようにしながらバルバトスを睨み答えはしない。
その時そばで呆気にとられていたピンクの服を着た少女は急いでアリアに近付いて顔を覗き込む。
大きく斬られたあとから溢れるように血がどくどくと流れていて、それを見た途端に少女は人が死ぬ、それを目の前で起こっていることに咄嗟に回復を施し始めた。
それは無意識な事で、少女も何も考えずに行っていた。
すると扉から二人が入ってきた。
それはカイルとロニで素早く武器を構えて睨みつけて視界の隅で血を流し倒れるアリアとそれを治療する少女にフィリアはずっと声をかけ続けていた。
「起きて、起きてください!ああ、私のせいで…!」
「フィリアさんは悪くありません!気づかなかったわたしにも、責任が…っ」
バルバトスはカイル達に向き、二人は必死に戦っていたが強さは歴然だった。
フィリアは戦う方を気にしながらもアリアに声をかけるが、目は薄く開いて口からは出ない息が出ていた。
このままでは死んでしまう、そう思っていた少女は今にも泣き出しそうな表情でそれでも懸命に回復術を施し続けた。
戦いは互角、しかしカイルがバルバトスにいまだに剣の切っ先を向けたままでいた時、バルバトスはまるでおもちゃを見付けたように笑い出した。
「クックックッ…油断したか…ならば!!」
「…っ!」
先程とは違う更に素早い動きと力でカイルの剣を吹き飛ばした。
驚いたカイルは剣を拾おうとするが、すぐに道を塞がれて目の前に大きな斧が立ちふさがる。
「つ、強い…!」
「英雄に者り損ねたな…!これで終わりだ!」
高らかに笑ったあと、斧を高くまで掲げた時カイルに声が掛けられそちらを向くと先程飛ばされた剣をジューダスが拾い弧を描くようにカイルの手元に収まる。
すぐさま斧を避けてバルバトスの懐に入り切り付けると、そのまま後ろに後退し少し呻きながらもそのあとおもちゃでも見付けたようにまた笑い出す。
「カイル…デュナミス、と言ったな。お前とはまたいずれやり合うことになるだろう…ククク…今日はここまでだ。」
「っ!待て、バルバトス!!」
「カイル、今はそれ所じゃねえ!アリアが…!」
出てきた時と同様に黒い何かに包まれながら消えたバルバトスを追い掛けようとするカイルの肩をロニは掴みアリアの事を言えばすぐに我に返ってアリアの元に行くとさっきよりも少しはマシになったようで穏やかになっていた。
「ごめんなさい…わたしが…わたしがしっかりしていれば…っ!」
「キミのせいなんかじゃないよ、きっと!それに、こうして助けてくれたから…」
今だに自分を責めるその子にカイルは懸命に違うと主張する。
その時フィリアによって遮られて、彼女の部屋へとアリアを連れて行くと話してアリアをロニが横抱きして部屋に向かった。