まねきいれ
「ね、ねえ…アリア……知り合い、なの…?」
さっきまで怒るようにペンダントに食らい付いていたカイルくんは私とエルレインの会話から知り合いなのか聞いてきたけれど、頷く事も首を横に振る事もせずただエルレインを見つめる私はまるで動けなくなった蛙のようなんだろう。
そんな私にお構い無しにエルレインは優しい笑みを絶やさずに私だけを見詰めカイルくんに『そんなところです。』と答えて私に触れてきた。
「アリア…エクリア…」
「…っ!!」
「あなたを神殿への出入りを、特別に許可しましょう…。」
誰にも言っていない私のれっきとした名を言うエルレインに私は怖くなり後ろに下がる。
しかも神殿へ出入りを許可されるというのは、不思議で仕方なかった。
私はアタモニ神団に入るつもりがないのに、彼女は何がしたいのか分からない。
言いたい事を言ったエルレインはそのまま他の神官と共に去って行き、人々はさっさと自分の店に戻ったり子供は友達と一緒にと人だかりはなくなって私とカイルくんにロニが残る。
私は何も言えずに下を向いていたらロニは気を効かせるように宿で休もうと言って、宿に向かう。
すると宿のおじさんがピンクの服を着た女の子が神殿に入って行ったと言った途端にカイルくんは飛び出すように出て行ってしまった。
それを追い掛ければ神殿の入口で神官達に止められているのが見えて私はカイルくんのそばに行けば神官が私を見て顔色を変えて笑顔で私に声を掛けた。
「ああ、あなたはエルレイン様の…今日は参拝の日ではありませんが、よろしければ中にどうぞ。」
「あなたは特別ですから、いつでも出入りして構いません。」
カイルくんとロニを無視して私だけにそう言う神官に私は少し怖くなってロニの後ろに隠れようとしたらカイルくんが自分達も入れるだろという感じの言葉を掛けていたが神官はそれを許しはしなかった。
「なんでだよ!アリアの友達のオレ達が入れないなんておかしいじゃんか!」
「これはエルレイン様の決められたことだ。アリア様のみ出入り許可された、だからお前達に用はない。」
「チッ…これがアタモニ神団かよ…。」
「おいお前、何か言ったか。」
悪態をつくロニに一人の神官が睨むように見れば不機嫌丸出しの表情で『なんでもねえよ。』と素っ気なく言い放った。
尚も笑顔を向ける神官に私は曖昧に微笑んでおいて、一旦私達は離れてどうするか話し合った。
「どうしよう…これじゃあ、あの子に会えないや…。」
「んー…。あ、確かここに裏から神殿内に入れる場所があるって聞いたが…。」
『今は使えるかどうか…。』と困りながら言ったロニの言葉にカイルくんは飛び付いて試しに行ってみようという事になった。
私はと言うと正面から入れるなら入って構わないとのことみたいだけど、私も二人と一緒に裏から入りたい。
けど何故かダメと言われてしまった為、我慢して正面から入ることにする。
ダメなのか聞きたいけど、話せないから。
ふと空を見上げれば私の気持ちなんて関係無しに綺麗な青だった。