あなたの為に | ナノ
せいじょ




ユリアラは私に言い聞かせるように何度も言葉を掛けてくれた。

それだけで安心して、落ち着いていられる。


今まで私をこんなに思ってくれる人はいなかったから、嬉しいような違うようなそんな感じがして、ユリアラに頬を擦り寄せればくすぐったそうに丸く綺麗なそれを光らせた。


そのまま抱きしめたまま私は目を閉じていたせいかカイルくんとロニの声で、いつの間にか眠っていたことに気付いて起きて二人に両手を合わせて謝る。

二人は許してくれてすぐにアイグレッテに向かった。


アイグレッテはすぐそこで中に入ればとても見てきたもので大きかった。

私のいた世界よりは大きく、でも小さい気がするけれどそれは気にしないでおいて先を歩くカイルくんとロニのあとを追う。


二人は見て回りたいと言っていて、私は二人が戻ってくるまで宿に居るように言って宿を探す。

だけど初めてな場所で宿が分からずここの場所の人に聞いてなんとか宿に着き、男性の人に部屋のチェックをしようとした時『おや、可愛いお嬢さんだね。』と言ってきて私はどうするも出来ず、曖昧に微笑んだ。



「いやあ、にしても繁盛してるよ〜。なんたってここにアタモニ神団が出来たんだ。そのおかげでレンズをついでに寄付してくれるから、有り難いもんだ。」



宿のおじさんの話によれば、ここアイグレッテにアタモニ神団が出来てから、アイグレッテに観光してくる人が増えて、宿利用者も増加しているとのこと。

観光の内容はエルレインという女性を一目見たいが為だったりストレイライズ大神殿に祈りに来たりと様々みたいで、聞いていてどれだけこごがすごいか伝わった。

宿のおじさんから話を聞いていたら外から一人の男性が慌てるように入ってきてエルレインが来た事を伝えて来て、また外へ行ってしまった。

すると宿内に居た人が口々に『エルレイン様…!?』『赤ちゃんが安心して生まれますようにって…!』と言い、すぐさま出て行く。



「エルレイン様が…!あ、お嬢さんも一緒に来るといい。いや、一緒に行こうか!」



いきなり慌て始めて私の手首を掴んで無理矢理宿から外に出る事になってしまった。

その時痛む足にくじきそうになったけれど、なんとか宿のおじさんの後をついて行ってたらユリアラが小さく『このクソ親父め…。』と聞いた事のない低い声で呟いたのが聞こえたような気がしなくもない。



「あ、アリア!」



私と宿のおじさんに気付いたカイルくんがこちらに駆け寄って来た。

二人もエルレインの登場に驚いているみたく、人の波に呑まれてここまで来たらしい。

すると真ん中が開かれるように人が後ろに下がるのに私達もならうと、数人の人の真ん中に知っている人がそこにはいた。


長い手足に人間とは思えない表情、全てを哀れむような笑みを浮かべるその女性は私を邪魔と言い、自分の都合で私を戻した人。

固まる私にカイルくんとロニは女性の首に掛けられているペンダントに注目しており、私には気づかない。

すると、カイルくんは女性エルレインの前に立ちはだかったのが見えた。

だけど今の私にはどうすることも出来ないし、私の中ではエルレインに聞きたい事が沢山ある。

でも声が出ない、もし彼女が私の声を奪ったんだとしたら…。



「…あら、また会いましたね。」



ふと意識を無理矢理戻されるように掛けられた声に周りから見ればわざとらしいように私は体をびくつかせた。

でも私からすれば本当に驚いたから、何か言うつもりはない。


エルレインを見ると私と会った時とは違う声音と表情で見詰めてきた事に、違和感を感じた。

正直、気味が悪い。




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