しょうじょ
奥に進むと一人の少女が忙しなく周りを見渡して何かを探していた。
カイルくんが話し掛け、振り向いたら泣いていたのを見て私達はぎょっとした。
大きくて綺麗な瞳からはぽろぽろと大粒の涙を流していて、不謹慎ながらも美しいと思ってしまう私がいた。
「な、泣いてるの…?」
「っ…なんですか。」
強がりながらも涙を拭ってカイルくんに背を向けて『忙しいんです。』と言って去ろうとした時カイルくんはペンダントの事を告げた。
するとさっきとは違う驚いた表情をしてカイルくんの手にあるペンダントを見つめた。
「これ、君のだよね?さっき崖のところに落ちてたんだ。」
「…。」
「なんだよ、礼も無しか?」
受けとった少女に対し『失礼だなあ、全くよ。』とロニが肩を竦めながら言ったらカイルくんが尚も少女を向いていた。
少女は小さく戸惑いながらお礼を言い、下を向いた時私の存在に気付いたその子は私を見て驚いていた。
「……あなた…。」
よく分からなくて首を傾げさせたら何か言いたげにしながらも何も言わずに黙り込み暫くしてから私達に背を向けた。
「…ペンダントを拾ってくれたことには、感謝します。でももう関わらないでください。」
『それじゃあ。』と素っ気なく呟いてそそくさと行ってしまった。
私達は後ろ姿が見えなくなるとロニは文句を垂れはじめた。
「あんな女追い掛ける必要ねえよ。」
「ダメだよ!絶対に俺が英雄だって教えるんだ!」
そう行ってまた先に走って行ってしまったカイルくんにロニは私をちらりと見てため息を吐いて追い掛けて行った。
残された私はどうしようかと見送っていたけれど痛む足を我慢しながら小走りで追い掛けた。
けどなかなか追い掛ける事が出来なくて立ち止まりそうになったが、なんとか追い付く。
そしてアイグレッテに着く前に日が暮れてしまった為、野宿することになった。
「こんなところで野宿なんてしてたら…」
「あの子が行っちゃうよー。なんて言うんだろ。…ったく、少しは落ち着けって。こんな疲れた状態でモンスターに遭遇してみろ。オレらおしまいだぜ?」
ロニの言葉も正しかった為、カイルくんは押し黙った。
確かに今の状況だと無理だし何より私は足が痛い。
それにきっとカイルくんも疲れているだろうから、休むのが正解で流石この中での最年長でお兄さん的存在なだけある。
私は二人が横になったのを確認してユリアラを抱えながら近くの月の明かりがよく見える石の上に座った。
足は痛むけれど、アイグレッテに着いたらゆっくりと冷やすか歩かずやすめば大丈夫だと思う。
今私が考える事はいっぱいある。
声が出ない原因と私がここに居る原因にあの女性の私を生かした目的。
考えたくは無いけれど、でも私じゃない私がそれを考えろと訴えてくる。
もし私が利用される為に生かされているのだとしたら?
本当は私は生きていなくて、今私がここにいるのは誰かの代わりだとしたら?
生きるべきだった人物の、埋め合わせだったら?
私は、本当はここに居てはいけない人物なのに、それを無理矢理他人から居座らせられてるとしたら?
なら、私は死ぬべきではないのだろうか?
『アリア。』
「!!」
そこで私は、ユリアラの声に気付いて、膝に乗せていたユリアラを見詰める。
輝くそれは、まるで私の今の考えや気持ちを知っているかのように優しく私を照らしていた。