ともに
「あんた今何時だと思ってんの!?」
「ごめん、母さん…でもオレ…!」
「だからあんたには冒険なんて早過ぎんのよ!もう寝なさい!」
カイルくんの話を聞こうともしないルーティさんはそう言い捨てて外に飛び出して行った。
私とロニはどうしようも出来なく、ロニは私の頭を撫でてからカイルくんに声を掛けて帰って行った。
残された私とカイルくんはどうしようと思い、カイルくんのそばに行って顔を覗き込むとその顔は諦めないという表情だった事に私は驚いた。
こんなにも意志を曲げることなく真っ直ぐなカイルくんを初めて見た、すごく、素敵だと思う私がいる。
「あ…アリア…。ごめん、オレもう寝るね。絶対に母さんに言うんだ…。おやすみ、アリア。」
こんな状況でも彼は冒険に出たいと曲げない意志でルーティさんにぶつかって行っている。
それに比べて私はなんなんだ、この様は。
なんで私はここにいるのかさえ分からないし、ましてや私は彼のように何か目的は無いのだろうかと思う。
残された私は部屋に向かいユリアラをそばに置いて話し掛ける。
とは言うものの、心で話すから、話しているのに入るか分からないけれど。
…ねえ、ユリアラ。
『ん?何、アリア?』
私ね、自分が分からないの。
『…アリアは、アリアでしょ?』
うん、そうだよね、でも…違うんだよ。
『どういう意味?』
……私、ここの人じゃ…ないから。
『…あの変な女が言ってた存在しないって、そういう意味だったんだな。ま、どっちにしたってアリアが居る訳だし僕もこうして居る訳だから、ここの存在じゃなくとも僕のマスターはお前だけだよ。…決めた!お前が僕の最初で最後のマスターだ!よし、これでアリアは僕を手放せなくなったね。』
……勝手だね、ユリアラ。
『んなわけない。寧ろ僕を見付けてくれたのがアリアで安心したよ。』
『気になる事とかあるけど。』と肩を竦めるような事を言ったのに私は下を向いた。
確かに、私は何故かユリアラが人として生きていた時代に行っていたと思ったら戻って来ていたし、それになによりこういう事にあまりにも驚かない自分もいる。
普通ならどうしてとか何でユリアラが生きていた時代に居たのだとかじゃあ何でユリアラは剣になったんだろうとか沢山知る事はある、だけどそれを追求したいと思う自分は居なくて不思議だった。
だって、聞いたところで何かが変わる訳でもないしもし知る意欲が強ければ真っ先に図書館やいろんなところに向かっている。
『…もし、あいつが冒険に行く事になったら…アリアはついていくの?』
その質問に私は迷いなく頷いてユリアラを抱きしめた。
ここではない私の世界に帰れる方法が見付かるなんて思わないけれど、あるとしたら探したい。
それに、ユリアラの事も知りたいと思う私がいたりする。
外の世界は不思議だ。
私の知らない何かがあったり、私の知らない世界がそこに広がっていて、自分の世界じゃなくともすごく惹かれる。
まだ、私は1歳で、世間で言えば赤ん坊だけど。
だけどそれでも私は自分を探したい。
自分の、存在意味を知りたい。
なら今はカイルくんの冒険に一緒に行って、守り、探そう。
『僕は最後まで付き合うからね、アリア?』
うん、もちろん。そう心で言って微笑めば『じゃ、もう寝ろ。』と優しく語りかけるように言われ、私は大人しくベッドにユリアラを抱きしめながら目を閉じる。
そして朝目覚めて1階に降りればルーティさんは昨日と打って変わって冒険へと見送ってくれた。
外で待っていたロニと共に、クレスタに別れを告げて緑いっぱいの世界に飛び出した。
≪知ってる恐怖≫