しんよう
私は目元を乱暴に拭っていたら『赤くなるからあんま強く擦っちゃ駄目だよ。』と声が頭に響いてふと顔を下にしていたのを上げた。
やっとユリアラが話してくれた、ただそれだけの事なのに凄く嬉しくてロープから外して抱きしめる。
鞘に入っているから大丈夫だけど、今きっとカイルくん達が来て私の姿を見たら変に思うんだろうと考えながらも抱きしめる事をやめない。
『なんだよ…そんなに僕が恋しかった?』
うん、寂しかった、なんて言う事が出来ないから頷いて心の中にだけ呟いたら『寂しかった、か…。』と聞こえ、ユリアラを見る。
剣にしか見えないそれは私からすれば目の前にはユリアラが居る気がしていた。
『ああ、僕には今アリアが…マスターが思ってることがわかるから大丈夫だよ。』
『心で話す感じで平気。』と丸い綺麗なものを光らせながらそんな事言うユリアラを抱きしめながらありがとうと告げて、さっきのジューダスのことを相談しようとしたら、カイルくんが水の音を地下水路に響かせながら私のところに来た。
「あ、いたいた!もー…ジューダスったら、置いて行くなんてしなくてもいいのに…。」
剣を抱きしめる私を不思議がらないで私の頭を撫でながら『行こう!』と手を差し延べてくれたので、手をとった。
カイルくんはジューダスが私を探して行ったはいいが何故か不機嫌な表情で置いてきたと言ったらしく、カイルくんが来たと言うことを説明してくれた。
ジューダスとロニのところに戻る途中、カイルくんの大きな手が暖かくて着くまで離しはしなかったけれどロニは羨ましいとか言いながら私に手を繋がないか言われたけれども曖昧に笑って誤魔化しておいた。
「あれ、ここ通れなくなってる…。」
「…ここを通るんだが、上に何か落とさないといけないみたいだな。」
『なら俺が…』と言うロニに私が行くと主張してみた。
するとロニとカイルくんは気をつけてと心配してくれたけれど、ジューダスは私を見ることなく言葉も無視して私が行くつもりの梯子に登って行ってしまった。
それを私は追い掛けて梯子を登って行ったと同時にロニやカイルくんに何か言われたけれど気にする事なく進んだ。
梯子を登りきったところにロープで吊された大きなドラム缶らしきものがあった。
それをどうするか手を顎に持って行きながら考えるジューダスが居て私は立ち止まって眺めていた。
「……お前か。」
こちらに目線だけ向けて呟く彼に私は少し下を向いて自分の足元を見つめた。
そんな私を気にする事なく今どうするか考えるジューダスに抱き抱えるユリアラに話し掛けた。
正直、ジューダスが怖い。
信用されていないと理解はしている、知らない人が居ればそれは誰だってあることだから。
だけど、私にもやれることはあるんじゃないかと思うから、だから私だって信用してとは言わないけれど、頑張りたい。
そう心で言えばユリアラは喋りはしなかったけれどただ一回だけ綺麗な丸いそれを光らせた。
勇気を貰えた気がして、私はジューダスのそばまで行くとやっぱりと言っていい程に嫌な顔をされたけれど堪えて私はドラム缶のぶら下がっているロープを持っていたユリアラで切ろうと鞘からユリアラを抜いた。
「…何をするつもりだ?」
「……。」
喋れないと演技されてると勘違いされているのなら、行動で示すしかない。
疑われるなら、本当なら、怖くて仕方ないのに。
私は思い切りロープをユリアラで切った。
そばで見ていたジューダスは静かに見ていたけれど、私じゃなくてユリアラに目を向けていたのには私は気付かなかった。