ろうや
真っ白い雪に足を取られながらも、無我夢中で走り、魔物から逃げる。
その時人、ユリアラが私を見つけたと思った時に驚いた顔をしたかと思ったら私に手を伸ばしていた。
その手を取ろうとした時私は気付かなかったのか、後ろにいた魔物に突き飛ばされ近くの木に体を打ち付けてしまった。
魔物は私の周りを囲むように迫って来ていて、魔物の間にユリアラを見つけて私は咄嗟に『逃げて!』と叫んでいて、自分自身にも驚いた。
でも、今ここで逃げてもらわなきゃ、いけない気がするから。
私は体中痛みながらも立ち上がって森の奥へ逃げ、多くなる魔物に怖くなりながらも、でも走ることはやめなかった。
ただ、死にたくないだけ。
たったそれだけで、私の体は自然と動いてくれて、縛られていた私じゃないと確認される。
大丈夫、大丈夫、生きる、私は、絶対に。
その時、あの時に聞こえた声が聞こえてきた。
生きたいか、と。
あの人は、人なのか分からないけれど、なんでそんなことを聞くのか分からなかった。
「生きたい、生きたいに決まってる…!私は、私…は…!!」
『お、おいアリア?何一人で喋って…。』
「ユリアラ、私…死にたくない…!私、まだ…まだ…。」
だけど、それでも生きることに縋り付きたい。
突然奪われた私の世界、突然現れた私の新しい世界、私はまだこどもで、考えとかちゃんと今はまだ、出来ないけれど、生きることにだけは、どんなに無知でも感情的にはあるはずだから。
『なら、私の為に動け。そうすれば…生きられる。』そう言った声に少し変に思った。
昨日か今日かいつかは分からないけど、会った時に彼女は私を邪魔だと言っていた。
なのに今彼女は私に生きろと言う、よく分からない人。
でも深くなんて考えたくなくて、私は言う通りにすると、この後何があるかなんて知りもしないで私はそう答えていた。
その時体が傾くのが分かり、下を見たら底が分からない崖で、体はそのまま落ちていく。
ああ、きっと彼女に騙されたんだ。
やっぱり、彼女は私に生きて欲しくないと。
ユリアラが何度か私の名前を呼ぶけれど、分からない。
落ちていくなか、私は意識がなくなった。
”世の中、全て騙し騙される世界”
それが裏での台詞で、紙一重なこの世の中の一つ向こうのよくあるやり方らしい。
なら、表の世界は?
その答えを、教えてはもらえなかった。
人は何ものにも執着して、本当の事を忘れてしまう。
大事なものはいつも側にあるのに、それに気づけないでいる。
大事なものが居て、幸せなのに、贅沢になり、いつしか乞うようになってしまっていたと。
それが、私の世界だった場所での…。
『……アリア。』
ふと、ユリアラの声が聞こえた。
小さく、囁くような声。
そこで思い切り目を通し開け、目の前を見詰める。
私は荒い息を落ち着かせる為に深呼吸をしようと思ったけれど、今の状況を把握しようとするが分からず、ゆっくり起き上がって周りを見渡す。
私が横になっていたのは二段ベッドの一番上でベッドから降りてみまわすと窓一つなく、ただ大きな扉みたいなのが一つあるだけで他は何もない。
仕方なくベッドの上にではなく下の方に潜り込み今の状況に恐怖しながら目をつぶった。
そこで私はふと、よく最近眠るなあと思いながらも、何故か襲う睡魔に意識を飛ばした。
ここからが、はじまりだなんて知らない。