いっとき
出て行ったきりなかなか帰って来なくて何時間か経ったんだろう私はまた眠気が襲ってくる。
さっき自分が横になっていた場所に横になった時、頭の中に声が響いてきた。
『…なあ。』
「ぅん…?」
『……お前、千年前に飛ばされてるって、気付いたか?』
「んー…。」
今にも眠ってしまいそうで、剣の声だと分かっていても曖昧な返事しか返せない。
そういえばやっと今話してるなあ…さっきまで寝てたのかな?
まあ、でもいいかなあ。
「んー…眠い…。」
『ああ、そういえば名前言ってなかったかな…僕は…。』
「ん?ああ、ごめん寝るところだった?」
剣が自分の名前を言おうとした時にさっきの人が帰ってきた、でもそれでも私は眠くてただジッと見詰めて頷く。
すると『お前、ガキだなー。』と笑いながら私の頭を撫でて寝てもいいと言われたので素直に寝ることにして私は目を閉じる。
その時彼は『あ、僕の名前はユリアラ。バルセウス・ユリアラだよ。』と意識が遠のく時に聞こえてきたから、口だけでも名前を呼んでそこで本当に意識がなくなった。
温かくて、落ち着くその体温のおかげなのか見た夢がすごく安心しているのだった気がする。
目が覚めれば部屋には誰も居なくてただ剣のみがいた。
「おはよう、えっと…。」
『ユリアラ、だ。お前僕のマスターになったんだから覚えてよ。』
『ごめん…ユリアラ。』と言えば少しした後に気にしてないと返ってきたので安心したのもつかの間、いきなり誰かが入って来たかと思いそちらを向くとユリアラではない知らない人がいた。
びっくりして固まっていたら相手も見詰め返していてお互いが固まったままだった。
「お、お前…誰だ?」
「あの…私、ユリアラ…に…。」
いきなり発せられた言葉になんとか答えたら相手も分かったようでさっきよりも柔らかい雰囲気で自分の事を紹介してくれた。
彼はユリアラと一緒の部隊にいるアスティーと言うらしい、もちろん部隊とはよく分からないけれども、きっと王様に仕える兵というんだろう、本で読んだことがある。
アスティーは私にユリアラのことを沢山話してくれたあと私の剣を見て戦えるかと尋ねられ、少しはと答えると驚かれてしまった。
「へえー、立派なモンだな。あんた美人だからてっきり…。」
「美人…?私?」
いきなりのことでアスティーの言葉を遮り聞いたら笑顔で『ああ、美人だぜ、お嬢さん!』と言われ、何故か恥ずかしくなってきた。
美人と言われるのは初めてだしなにより今まではこども扱いされていて悲しかったけれど、でもこれはこれで恥ずかしいものだった。
暫くしてユリアラが帰ってきてアスティーは交代するように出て行き、またユリアラと私だけになりジッと見詰める。
「さて…アリア。君にはちょっと危ないかもしれないがそこはここより安全だから移動しよう。」
『ある人に話したら連れて来いって言われてさ。』と苦笑しながら説明してくれ、私は了解して頷いた。
出発はあと少ししたらするみたいで、それまではここでユリアラと一緒にのんびり過ごした。
でも、それはつかの間だった。