ぬくもり
風呂から出てカイルくんと一緒に夜風にあたりながら、気分的に外にあった木で出来た横長い椅子に座る。
お湯が温かったと言っても十分温かくて、夜風はちょうどよく涼しい。
星空を眺めながら、ここの空はすごく綺麗だなって思う。
雲一つなくて綺麗な夜空で、ずっと見ていたいくらいに。
「…そういえば、アリアってどこから来たんだ?」
「どこ…って言われても。」
外に出る事をまるで禁じられていた世界だったから、私の世界は部屋だけでどこからと言われたら部屋しかなくて、だから私は上げていた頭を下に向ける。
そんな私にカイルくんは『言いたくないなら別にいいんだ。』と言ったのを最後にお互い黙り込んだ。
私はまた夜空を眺める。
今、何かが空を流れたような気がしたけれど、気のせいだと思うから、ただ眺めるだけに徹した。
暫くしてカイルくんはくしゃみを一つして『そろそろ戻ろっか。』と鼻水を垂らしながら言って立ち上がった。
そんなカイルくんに私は小さく笑ってから頷いて立ち上がり、中に入りルーティさんにおやすみの挨拶をしてから部屋に行く。
部屋に入れば夕方と変わらずで、本当に私はここに居るんだと確認される。
でも、なんだか寂しくてなかなか眠れない。
ベットの中で寝返りを何度もしていたら完全に目が覚めてしまい、私は起き上がって窓の外を眺める。
さっき見た時と同じで綺麗で、安心して、心が、こう…安らぐような気がした。
それでもなかなか眠れなくて、私はルーティさんの部屋に行こうと部屋から出るとルーティさんの部屋だけ明かりがついていたのでノックして入る。
「あらどうしたの、アリア?」
「あの…眠れなく、て…。」
自分で言っておいて恥ずかしくて謝って部屋から出ようとしたら呼び止められ振り向いたら、ルーティさんが『おいで』と言いながら手招いた。
少し戸惑いながらもルーティさんのところに行ったら私をベットに横にさせて、そばにあった椅子に座って頭を優しく撫でながら微笑んで私を見つめる。
「ルーティさん…。」
「ん?眠くなってきた?」
その問いに私は少し苦笑しながら首を横に振る。
『すぐには無理か』と眉を下げながら笑ってそれでも私の頭を撫で続けた。
「ふふ、カイルが小さい頃を思い出すわね。」
「カイルくん…?」
「あの子、まだ赤ん坊だった時にね。お昼寝するたびにあたしがこうやってしてあげてたの。するとコロッとすぐに寝ちゃってて、スタンと一緒に眠るカイル見てたらスタンも寝だしちゃってね。」
『本当、似ちゃうものなのねー。』と可愛く笑って話してくれるルーティさんに私も笑みがこぼれる。
家族というのは、こんな風なんだろうな。
そこで私はカイルくんに聞かれた事を思い出す。
どこからと言われて、もしここに私の居た場所の地名があるとしたら、きっと帰れるんだろう。
だけど私は一度死んでいて、もしかしたら私の居場所は無くなっていて、帰る事は許されないことになる。
少しと言えば嘘になるけれど、凄く寂しく思う。
私にはもう、帰る場所が無いってことだから。