「 」
崩れゆく中、アリアはそっと目を閉じていた。
短い間とは言え、いろいろなことがアリアに降りかかり、苦悩させた。
自分の意思でここまで来たわけじゃない。
自分の考えで、ここまでやってきたわけじゃない。
エルレインの力によって、アリア自身を都合のいい時に使い、都合が悪くなれば捨てていく。
あの時、アリアは激しい頭痛と共に、様々なことが思い出された。
カイルや、ロニやルーティとの出会い。
そして旅立ち、ジューダスとの出会い。
正直、ハロルドとの会話なんてそう多くはなかった。
だけどとてもいい人だと、今回で気づかされる。
そして見えてきた景色は、ジューダスとシャルティエがみんなが眠りに落ちたあとにこっそりと二人で話している様子だった。
「ご、めん……シャル……、わた、し……」
『謝るのは……僕の方だよ……こんな、こんなのってないよ……!』
『……アリアは、苦しめられてた。過去の記憶を使って生活をされ、矯正されるように僕を扱わせた。アリアの中身は、乱れまくってる……僕も、キツかったんだ』
ユリアラの言葉に、シャルティエから息を呑むような声が聞こえてくる。
マスターとソーディアンは一心同体、アリアとユリアラは感覚までもが一緒になっていたということになる。
それほどまで、アリアは追い込まれていた。
アリアの体は半分がしっかりとした人としての細胞はあれど、もう半分は空っぽのようなもの。
ただ形を生成するためだけに、くっついてきたようなものだ。
「……わ、たし……ジュー、ダスのため、に……かえ……きた……よ……ジュ……ダ…………」
『……アリア、疲れただろ。もう寝よう。起きる頃にはあいつが起こしてくれる』
「ん…………お…………み、ユ……アラ……」
『おやすみ……アリア』
二人の会話は異常だ。
そうシャルティエだけでもなく、ディムロスたちも感じていた。
まるで未来が見えているかのような、ここで死ぬという感覚などありえないとでも言うかのように。