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先ほど聞こえた声が頭から離れない。
ミアが戻ってくるまでが長く感じたアリアは練習として使っている剣を持って、中庭へと歩いていく。
よく行くようになってから、どこへ行けばたどり着くのかとわかってきていた。
変わらない幸せな時間、空間。
その全てがアリアは満足していた。
しかし、ここ数日何かがアリアの中で蠢いていた。
中庭へとたどり着けば剣を構え、振るう。
「っは!せい!」
剣を振るっている時が、楽しく、何もかもを忘れられていた。
そういえば私は剣よりも拳を使った戦いが好きだったのでは、ふとアリアはどこからか湧いてきた思考に動きを止めた。
包帯が巻かれている左腕を見つめ、握りこぶしを作った。
微かに口元が開き、声にならない声で何かを紡いだ。
だが、アリア自身にもそれがわからなかった。
「……私は、」
――――あんたは、ここで何をしているの?
――――……幸せになるんじゃ、なかったの?
「!うあっぁ……!!」
自分の声が、まるで自分の意思を持って行かれたかのようにアリア自身の口から紡がれる。
途端に頭が割れるような痛みがアリアを襲い、その場に倒れ込んでしまう。
そして次に見えた光景に、アリアは声にならない甲高い叫び声を上げた。