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「希代の名演説と呼ばれたリトラー総司令の終戦宣言をまさか、こんな形で聞くとはな」
「それに……こんな気持ちで聞くことになるとはね」
地上軍が集まっている場所とは違う、見下ろすような形の場所でカイル達はリトラーの言葉を聞いていた。
カイルは後ろにいるロニの方を向いて、ぽつりとこれでよかったのかと不安に言葉をこぼした。
あの時ミクトランのもとへ向かっていれば、バルバトスの言葉を聞いていれば。
「あんた、アホね」
突然聞こえてきた声に、みんなそっちへと視線を向けた。
「それじゃ、あのサルとレベルが同じよ」
「ハロルド!」
演説と宣言が終わり、皆が解散していくのが見えてくる。
きっとタイミングよく話している内容がハロルドに聞こえてきたのだろう、呆れ気味にカイルたちの元へとやってきた。
「言ったでしょ?未来を知る者が自分の都合だけで歴史を変えちゃいけないって」
ハロルドの言葉は最もだ、だがカイルにとっては少しの間だけの出会いだったとしてもいなくなってしまうことの辛さは計り知れない。
それは彼女自身が一番経験した、なのにも関わらずハロルドは気高だった。
兄の死は無駄ではない、むしろハロルドにとっては誇らしく未来永劫変わることのない事実。
「それに、あいつもたまには使えるやつだってわかったし」
「あいつ?」
「ま!そんなことより、これからどうすんの?」
カイルの言葉に返事はせず、質問に質問で返した。
気にした様子もなく、カイルはバルバトスを追うことを伝えた。
最後の決戦とも取れるあの言葉に、以前と同じような様子だったアリアを連れ戻さなくてはいけない。