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「兄さん!!」
ハロルドはすぐに駆け寄り、カーレルのそばへと膝を付いて手を握り締める。
「兄さん!しっかりして、兄さんっ!」
「ハロルド……」
微かながらにカーレルは閉じかけていた目をハロルドに向けた。
「……はは、へんだな……幻聴、か……?いつもなら、兄貴って……」
「喋っちゃダメ!傷口が広がる!」
いつものハロルドではない様子に、酷い怪我をしていながらもカーレルはハロルドに手を伸ばした。
「……どうした、ハロルド……?なに泣いてん、だ……?」
カーレルの伸ばされた手を握り、言葉に出来ないハロルドは首を振って泣いていないと矛盾したように否定する。
だがカーレルは見えていないのか、口元に笑みを浮かべた。
「また……だれかに……いじめられた、か……?……あんしん、し……ろ……」
「兄さん……喋らないで……っ」
ハロルドの声は届かないのか、カーレルはハロルドにしか聞こえない声音になっていく。
「喋っちゃダメだってばっ!」
「……にいちゃ……は…………いつ……も……」
「いっ……しょ…………だ……」
言葉にならないような、だがハロルドには伝わったように喋ってはいけないと言いつつもカーレルの言葉に耳を傾けた。
そして続きを促すように、兄の顔を覗き込むがまるで眠りに落ちていくように、カーレルは目を閉じた。
「……兄さん……?」
ハロルドの呼びかけに、カーレルは目を覚ますことはなかった。
「にい…………さ……っ……」
ハロルドの様子を見ていたカイル達はただ、見守っていることしかできなかった。
ディムロスが何か言葉を掛けると、ハロルドは大きな声を上げて泣き出した。