れきしは動き始める
「……バルバトスには、これ以上手出しはできまい。放っておいていいだろう」
「でもジューダス!アリアが……まさか、あの時と同じようになっているなんて……!」
ジューダスの言葉に、カイルはジューダスに突っかかろうとしたときハロルドはわざとらしく二人の間を通って、機器をいじり始める。
「あ、ハロルド……」
「ロックをかけておかないとね。また、ベルクラントを起動されちゃたまんないから」
戦いが始まる前、バルバトスはハロルドの兄が死んでしまうことをハロルド自身にまるで誇らしげに言い、止めるなら今だと煽った。
戦闘が始まってからも、ハロルドの様子に変わりはなかった。
「……ハロルド、さっきバルバトスが言ってたこと…………」
「言ったでしょ」
カイルの言葉を遮るかのように、ハロルドは言葉を被せた。
「たとえ未来を知ったとしても私は、変えるつもりはないって。私は、自分のやるべきことをする……それだけよ」
最後の言葉が震えているように感じたのは、カイルだけではないだろう。
みんなは言葉を出すこともできず、ただ一言カイルがハロルドを呼ぶ声と機械音だけが響く。
身内が死んでしまうという悲しみは、計り知れないだろう。
だがそれでもひた隠しにし、これから迎える結末にハロルドは振り向く前にぐっと拳を握り締め、振り向くときにはいつも通りのハロルドに戻っていた。
「終わったわ。さあ、行きましょ、みんな。ミクトランのいる玉座の間へ……」
title「来世まで眠れ」