ねをのばして
「さあ、ここまでにしましょう……上達が早くて嬉しいわ」
「ありがとう……ミア」
お昼頃になってアリアとミアはお昼にしようということで一旦休憩となった。
始めたばかりだというのにアリアは様々な技を習得し、ミアを驚かせた。
ミアと共に部屋への道を戻りながら、アリアはふと立ち止まって先程まで居た中庭を振り返って見つめる。
天気が良く陽の光が差し込んでいて爽やかだ。
だがアリアには先程まで何かがあったかのような、ミア以外の誰かが居たかのような感覚になっていた。
「アリア?」
「……ごめん、ミア。ちょっとここで空見てから部屋に行くね」
じっと視線を向けることなく、ミアに声を掛ければ戸惑ったかのように返事が帰ってくる。
「なるべく早く戻っておいでね」と言ってから去っていくのを聞いて、アリアは中庭の真ん中へと歩いていく。
「……やっぱり、感じる」
先ほどと同じように、空気が少し違うように感じていた。
おもむろにアリアは剣を構え、深呼吸を数回ほど行う。
「……はぁっ!」
踏み込むように空を切れば、頬に感じる切っ先をあてがわれている感覚。
咄嗟に後ろへ下がり、地面を這う波動を目の前に繰り出す。
「魔神剣!」
まるで目の前に自分と対峙する者がいるかのような動きをするアリアは徐々に表情が生き生きとし始める。
純粋に楽しいと感じ、動いていた。
ミアと居るときとは違う動きと、覚えるはずもない詠唱を唱え、放っていた。
その時、自分の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
――……アリアっ
「!?……ぅあ!」
名前を呼ぶ声に、アリアは重力によって倒れて動けなくなる。
なおも聞こえる声と、上からの圧力にアリアは混乱し始めた。
楽しいと思っていた出来事が突然恐怖と化したのだ。