しんいり
「んー…あまりサイズが合うのってないのね…。」
ご飯を食べ終えたあとカイルくんはどこかに行ってしまい、今はルーティさんと一緒に何故か服の着せ替え状態で私に合う服を探してくれている。
着ていた服はところどころが破れてしまっていて、縫うしかないということで代用品らしい。
でもすごく真剣に選ぶルーティさんを見ていると嬉しく感じるのは、なんでだろう。
「んー、と…これでいいかな。うん、我ながら良いものを選んだわ!」
鼻が高い!と言いたげに腰に両手をついて私の格好を見て笑顔を浮かべている。
前の格好よりもおしとやかと言うべきなのだろう、ワンピースみたいだけど動きやすいように軽い。
私はルーティさんにお礼を言いながら頭を下げたらいきなり抱きしめられて驚いた。
「そんな畏まらないの!あんたがどこからとか、聞くつもりはないからここを家だと思って居ていいんだからね。」
「ルーティさん…。」
よしよし、と我が子のように撫でながら優しく抱きしめてくれる。
我が子とは言ってみたけれど、今の私はこれは予想でしかないから何とも言えない。
ルーティさんの子供はカイルくんで私は赤の他人と言えばいいんだろうか、きっとこんなに優しい人は他に居ないと思う。
暖かくて、柔らかくて、安心して、まるで…。
そこまで思考を巡らせていたら私を世話してくれた彼女を思い出し、目に涙が溜まって喉が詰まるように痛くなる。
あと、鼻の奥辺りがツンと痛くなってきた。
泣いてるんだと、気付いた頃には遅くて自分からルーティさんに抱き着いていた。
きっと私の気持ちを汲み取ったのかは分からないけれど『大丈夫、ここにいるから。』と言ってくれて、また涙が溢れる。
泣く、と言うのはきっとこういうんだ、私には泣いたことないから分からないけど。
悲しいとか、嬉しいとか、悔しいとか、そういうので泣くんだろう。
じゃあ、私は何で泣いてるのか、それが分からない。
今は、彼女の事を考えているから、悲しい…と言うんだろうな。
「ご、ごめんなさいルーティさん…鼻水、が…あぁっ…。」
「…あ、ほんとだ。」
まだ泣いているというのに私は鼻を啜りながらルーティさんの服を気にして謝る。
そんな私にルーティさんは気付いて小さく笑ったあと『まあ大丈夫よ!』と笑顔で言ってくれたことに安心したのか申し訳ないのか、まだ服を気にしていた。
暫くしてカイルくんが戻ってきたからなのか、私は無理矢理引きはがされてしまった。
何度も服は大丈夫と言っていたので、私は折れてベッドに潜り込んだ。
部屋はあまり使われない部屋を私が使えるように少し綺麗にされていて、当たり前だけれど物はあまりない。
私が今疑問に思うことと言えば、多分この家、というか施設みたいなのだろう場所は木で作られているようだった。
言ってはいけないけれど、古いなあって思うのは心の中にだけ留めておく。
でも、そんなことを思っていても、温かいって感じるのは、なんでだろう。
きっと、ルーティさんやカイルくんが見ず知らずの私に優しくしてくれたから、温かいって感じるのかな、そう考えていたらいつの間にか私はまるで誘われるように眠ってしまっていた。