あなたの為に | ナノ
らくには




「あら、おはよう。よく眠っていたわね」


「――え……、……?」




アリアは目を覚まし、自分の顔を覗き込む人物に驚いた。


会いたいと願いながらも、会うことなんてできない。

そう思いっていた人物が自分を愛おしそうに見つめていた。



「み……あ……?」


「ん?寝ぼけてるの?ほら、そろそろおやつにしましょう。アリアの好きなパイも作ったんだから」



アリアの頭の中は混乱していた。

起き上がりミアから離れてあたりを見渡し、腰に下げたであろうユリアラを探す。

しかしユリアラの姿は見当たらず、場所も見覚えがあり戸惑ったがすぐにミアを睨みつける。


これはきっとエルレインの仕業に違いないということを。



「よくも……!ユリアラを返して!」

「アリア……?何言って、」

「離してっ!」


触れてこようとするミアの手を払い、後ろに下がる。

例え本物に似ていようとも作り出されているミアは本物ではない、警戒心丸出しにアリアはミアから離れてその場から移動する。

ミアの自分を呼ぶ声を背中に感じながら、早く幸せな悪夢から目を覚まさなくてはいけない。



「……ジューダス……っ」



ユリアラもいないこの世界に、アリアは無意識のように名前を呼んでいた。




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