わがや
ゆっくりと目を開ければ私の顔を覗き込む二つの陰。
よく見ると私を助けて黒髪の女性と金髪の男の子がいた。
ジッと見つめていたら『はぁ…良かったわ…このまま起きなかったらどうしようかと。』と女性の方が安堵の声をこぼした。
金髪の男の子は何故か笑って『母さん心配し過ぎだよ!』と言ったと思ったら男の子は怒られた。
「そんな簡単に目覚めるようなこと言わないの!衰弱して死んじゃったり溺死だってあるんだし他にもあるのよ!?だから目覚めないかもしれないことがあるんだから、このバカ!」
「ご、ごめんって母さんっ!痛いっ痛いよー!」
降参とばかりに両手を上げて許して貰おうとするが、母さんと呼ばれた人は尚も怒っている。
私は起き上がってその光景を眺めていたら女性が気付いて『あ、今からご飯持ってくるからね!』と言って何処かに行ってしまった。
部屋には男の子と私だけになってしまったのに、私はふと緊張してきた。
知らない人の家で知らない人と二人きりの状況。
相手はなんともないようで私に気軽に話し掛けてくる。
「いやー、いきなり溺れててなかなか起きなくて、君、二日くらいずっと寝てたんだよ?」
「……そんな、に…?」
『母さんもそりゃあ、心配しちゃうなぁ…。』と少し困り気味になりながらも、すぐに笑顔になって突然私の頭を撫でた。
いきなりの事に驚いてベッドから落ちそうになってしまったけど、なんとか寸前で落ちないように男の子を見る。
「なんか妹みたいだなーって思ってさ。あ、ダメだった…?」
「え、あ…ううん…大丈夫。」
私がそう言えば笑顔でいろんなことを言い出した。
見た目に比べて子供みたいだね、とか。
話し方も、反応も、見てくる目も…それが全て、子供。
確かに、私は子供かもしれない。
何もかも、子供だ。
そんなことを考えていたらドアが開き、さっきの女性がトレイに多分ご飯なんだろうそれを持ってきて咎めるようにさっきよりも少し声を低くして言いながら戻ってきた。
「こらカイル!まだ病人の子に無茶させてたんじゃないんでしょうねー?」
「あ、母さん。大丈夫、ただ話してただけだし。」
カイルくん、は私の頭をまだ撫でながらそんな事を言う。
私は気にすることなく大丈夫と意思表示の為に少し微笑んだら、女性は何倍もの可愛い笑顔を見せてくれた。
「あ、紹介が遅れたわね。あたしはルーティ。で、こいつがカイル。」
「えっと…アリア、です……よろしく。」
自分から自己紹介するのが初めてで、とりあえず名前を告げた。
するとカイルくんと、ルーティさんは二人して私の頭を撫で始めて戸惑う私に気にすることなく言った。
「落ち着くまで、ここに居ていいんだからね!」
「あ、それオレが言うつもりだったのにー。」
『あんたねえ…。』とルーティさんはカイルくんに溜め息を吐きながらそう言ってまた言い合いになった。
私はやっぱり眺めるしか出来なくて、お腹の鳴る音で二人はやっと言い合いをやめて私にご飯をルーティさんが渡してくれる。
こんなにも、優しさを受けたのは、ミア以外初めてで、少し、嬉しかった。