迫る
不気味に笑うバルバトスはアトワイトを腕で強引に自身の腕の中に閉じ込めて斧をディムロスにちらつかせ、近づくことを許さなかった。
「残されたわずかの間、死をも上回る苦しみを味わうがいい。」
近づくことが出来ないことをいいことにバルバトスは次にアリアに目配せをすればそのまま重力に飲み込まれるように、アトワイトと共に消える。
ディムロスの呼び止めようとする言葉は虚しく、届かなかった。
カイル達はディムロスの元に駆け寄り大丈夫か声を掛けると怪我はしているが歩けるようだった。
カイル達がすぐにアトワイトを探しに行くと言い出すがそれをディムロス自身が制止させポッドに乗り込むように促す。
なかなか下がろうとしないカイルにハロルドが目の前から押し込むようにポッドへと連れて行く。
もちろん連れて行かれる間にも何かをわんわん言いながらポッドへと強制連行される。
連れてかれたカイルのあとに皆それぞれ後を追いかける。
「アリア、行くぞ。」
「……。」
ディムロスの傍に居たアリアは居なくなったバルバトスの場所をじっと見つめたまま動かない様子をジューダスは手を掴んでポッドへと一緒に向かう。
ポッド内ではカイルは納得行かないような顔で腕を組んで珍しく考え込んでいた。
そんな空気が漂う中、ジューダスはバルバトスがアリアに目を向けていたことが一番気になっており、アリアの顔を覗きこむとさっきまでとは打って変わって真剣に、そして下唇を噛んでいた。
「アリア…?……。」
何も言わない、というより何もいえないアリアはジューダスの呼びかけに顔を上げて微かに微笑を浮かべてなんだろうというように示していた。
アリアの表情は怒っているわけではなく、泣きそうな顔もしていない。
ただ、彼女は真剣な表情をしながらも微笑を浮かべている。
ジューダスは何も言えず、なんでもないと首を振った。
アリアは心の中で、決心をしていた。
title「時を越えてもあなたの傍へ」by 秋桜さま