頭くるくるパーの私が、唯一自慢できること

それは小一から今まで、無遅刻無欠席だということ


どんなに成績が悪くても、それがあるからなんとか気持ちも折れずにすんだのに…


「なんで寝坊したんだ私ィィィイ!!」


髪はボサボサ、制服もヨレヨレ

そんな状態の私は自宅から駅まで徒歩20分の道のりを全速力で走っていた


私が学校に間に合う最後の電車は7時45分にくる

そして今現在の時刻は7時44分


もう駅も見えているので頑張れば間に合う、はずだ

最後の力を振り絞って速度をあげた



ま、間に合えぇぇえ!












がたんごとん…


「…………………は、はは」


行っちゃった……


どさり、と持っていたスクバが落ちた


頑張った、私は頑張ったんだ

家からダッシュしたし、時間にもギリギリ間に合う、はずだったんだ


………はずだったのに


「定期…忘れた」


電車通学始めてたいぶ経つのに、なんという初歩的なミスを…


改札口におもいっきりぶつかり痛めた腹を擦りながらのろのろとスクバを拾った





「はっはっはっ!」

「…………う?」

「おま、どんだけ勢いよく改札にぶつかってんだよ……!」


腹いてぇ!と目に涙まで浮かべながら笑うのは学生とは思えない髪色のゾロくんだ


……バッチリ見られたうえに、笑われた

……………最悪だぁ


遅刻はするし、密かに想っていた相手には笑われるし

きっと今日の私の運勢、最悪なんだろうなぁ(ニュースの占い、)(見てないけど)


まだ笑い続ける彼に怒る気にもなれず、とぼとぼと切符売り場まで歩いていく

そんな私を見て流石に笑いすぎたと思ったゾロくんは慌てて私の後を追って来た


「お、おいナナシ」

「大丈夫」

「え?」

「ゾロくんのせいで落ち込んでるんじゃないから」


………いや、一割ぐらいは君のせいなんだけどね


あはは、となんとなく笑い返しお金を入れる

いくつかの数字が点灯し、私は140の数字に手を伸ばす





「ちょい待て」

「え?」

「ん、追加料金」

「え!?ちょっ…」

「ほら、こい」


伸ばした手を掴まれたと思ったら、180円追加された

光る160の数字を押し、出てきた二枚の切符

それを右手に、私の手を左手に持ったゾロくんは困惑する私なんかお構いなしに改札を通る


「……って、そっち上りだよ!学校は下り…」

「いーんだよ。学校の方には遊ぶとこなんもねぇだろ」


はい?遊ぶとこ?





…………ハッ!まさか


「さ、サボる気!?」

「ピンポーン」


ピンポーン、じゃなくて!


彼のやりたいことがわかり、必死で踏ん張る

このままだと学校を丸一日休んでしまう

遅刻も嫌だが、欠席はもっと嫌だ(せめて無欠席だけでも!)


その意思を伝えるとゾロくんは立ち止まりこちらに顔を向けた


「じゃあ、これが人生初の欠席っつーわけか」

「そうだよっ、だから…」

「そうか、初めてのサボりか」


そうかそうか、と何故か嬉しそうに頷く彼に文句を言うために開いた口が固まってしまう


「つーこたぁ、あれか。通知表の欠席んところに1が付くってことだろ?」

「そ、うだね」

「じゃあよ」





その"1"を見る度に、ナナシは今日のことを思い出すんだよな











「なんせ、人生初のサボりで欠席だから」

「………………」

「………お、電車きたぞー」





数十分前の私へ

あなたが寝坊したお陰で勘違いをしてしまいそうです(なんで、すか)(その笑顔は)








「カラオケでもなんでも奢ってやるから、さっき笑ったのはチャラだからな」

「…気にしてたんだ」

「ったりめぇだろ、嫌われたくねぇし」






……………訂正します

どうやら、勘違いではなさそうです







(どのタイミングで気持ちを伝えようか)





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………ちょっとゾロさんのキャラじゃな、い……?