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「#幼馴染」のBL小説を読む
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〈サンジ編前〉



海上レストランを目指し、北へ航海中のメリー号


「ふっふーん」

「何してるの?」

「エサやりです!」


鼻歌を歌いながら、手摺りに腰掛けるアルト

彼女はどうやらカモメにエサやりをしているらしい


…って、そのパン今日の昼ご飯じゃない!


既に半分ほどなくなっているパンを見て思わずアルトの頭を叩きそうになった

しかし、まぁ…笑ってる彼女を見たら、仕方ないと思ってしまう(それに、なくなるのはアルトのパンだし)


「お昼どうするの」

「大丈夫ですよ。なくなるのはパンだけですから」

「…………」

「ちょ、なんで黙るんですか!?ま、まさかおかずなし!?」

「フフフ…嘘よ」


本気にしちゃって…

アルトはなんと言うか………ピュアよね


ホッとしたアルトはまたカモメにエサをやり始めた




ピュア

それはいい意味も、悪い意味も持っている


ピュア過ぎる彼女はきっとこの世界の汚いところを知らないだろう

ここ、海賊船にいることもホントはありえないことなのだ(遭難したとか聞いたわ)


「アルトって、歳いくつ?」

「15歳ー」


15歳…実年齢より幼く感じるのは、アルトがあまりにも無邪気だからかしら


「お、アルトいいもん食ってんじゃんか。くれ!」

「嫌です」


向こうで遊んでいたルフィがやってきて、アルトの持っているパンを寄越せとせがむ

その遊び相手だったウソップが私の横に並んだ


「何してんだ?」

「特になにも」


しいて言うなら、アルト観察


じゃれ合う二人を見ながらウソップに私の思っていることを話してみた


「ねぇ」

「なんだ?」

「私…アルトに海賊やって欲しくない」


本人は海賊は嫌だ、と言ってはいるが


「じゃあ…少しだけ」

「これだけかー?」

「文句言わないでくださいよ」


海賊の船長と仲良くしている彼女

この船にいるのも満更ではないようだ

それにルフィの我が儘も加われば、彼女は海賊になってしまう可能性が高い




知らなくていい

アルトが知る必要ない


海賊の汚い部分を





関わってほしくないのよ

海賊なんかに








「まぁ…その気持ち、わからんでもない」

「…………」

「…だが、しかし」

「?」










「もっとくれ!」

「ダメでッぬああぁッ!?」

「アルト!」


ルフィがアルトのパンを奪おうと手を伸ばす

それを避けようとしたアルトが過って手摺りから落ちてしまった


視界から消えていくアルト

入れ代わりに入ってきたのは





緑色の頭


「…っぶな」

「ビックリしたなぁ」

「……ッ…〜ッ!」


ゾロがアルトを無事引き上げた

恐怖のあまり泣きじゃくる彼女を二人が囲む


「ごめんな、アルト」

「死ぬがどっおも゛っだ…!」

「生きてっから、落ち着けって」








「あいつらは離す気ないと思うぜ」

「…そうね」






彼女はピュア

それはいい意味も、悪い意味も持っている





すぐに笑って

すぐに泣いて

また、笑って


どこまでも真っすぐな彼女


この船なら、大丈夫かもしれない






北を進んでいくメリー号から響いていた泣き声は、いつの間にか笑い声に変わっていた





海賊+アルト

=汚れないでね



(あなたの笑い声)(それが好きなのはきっと私だけじゃないはず)


(だからずっと笑ってて)