甘い甘い甘い甘い…甘ったるい
なんだこの匂いは
キッチンから漂うその甘い匂いに胸焼けが起こる
確かに自分はそんなに甘いものが好きではない、がこれは好きな奴にもキツいだろう
…いや、わかってる
クソ眉毛が気持ち悪いぐらいノリノリだったからな
今日はあれだ、"バレンタイン"ってやつだろ?
好きな奴にチョコをやるっつー、くだらねぇ行事だろ?
……そう、くだらねぇんだ
くだらねぇ、のに
「……………はぁ」
なんで、あいつを探しちまうんだ、おれ…
見当たらない白頭
きっとキッチンで作ってるんだろう、なんて期待してしまう時点で、おれもこのくだらねぇ行事を楽しんでしまっているらしい
しかし、そんな期待をしても無駄だってことはわかっていた
「見て見てゾロさーん!サンジさんがこんなにチョコくれたー!」
「………あぁ、そう」
わかってたさ、こいつがそんな行事に参加するはずがないってことなんて
嬉しそうに口をモゴモゴさせるこの馬鹿を、理不尽だが無性に叩きたくなる
「……しっかし、不思議な日だよね」
「なにがだよ」
「なんで今日、チョコを食べるの?」
「………………」
ピタリと体の動きが止まったのがわかった
「不思議だなぁ…」
「………おい」
「ん?」
まさか、とは思うが
「……お前、今日なんの日だか知らねぇのか」
「…………?」
……まさか、だった
相変わらず口を動かすアルトは頭にクエスチョンマークを浮かべる
「………チョコ食べましょうデー?」
…………参加する、しない以前に"バレンタイン"を知らねぇのか
自分の想像の遥か上を越えていったアルトの発言
はなっから貰えるとはあまり思ってなかったが、まさかのカウンター攻撃にもううなだれるしかない
………こいつの家族は今までなにを教えてきたんだよ
「ゾロさん?どうしたの?チョコ食べてないの?私のでよければあげよっか?」
「………次喋ったら、つねるからな」
「何故!?」
アルト+2月14日
=知らないときたか
(なんか、義理チョコ貰って喜んでる野郎より)(おれ、)(惨めじゃねぇか?)
(………とりあえず、この馬鹿つねろう)
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