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「チョコバナナー!」

「おー」





「あ!綿あめ!」

「はいはい」





「ゾロさん!林檎あめー!」

「…いくらだ」





………これ、デート?


あるもの見るもの全てに目を輝かせ、食べたいと思ったものには我慢などせずに飛び付くアルト


………なんだか自分の右手にでっかい子供がいるみてぇだ


不満がまったくない、わけではないが……うん、まぁ、アルトだし

林檎あめの代金を屋台のおっさんに渡し再び歩き出す


「ゾロさん、おいしーよ」

「そうか」

「…………食べる?」

「ん?いや、いらねぇ」


つか、口周り汚い


そう注意してもアルトは特に気にすることなく口を赤くする

その姿は誰がどう見ても子供で(実際ガキだけど)色気の"い"の字も感じさせない


浴衣、着てるのに…

しかも大人っぽそうな黒い浴衣


………それなのに色気がでねぇとは、ある意味才能だな


今だって頬をだらしなく緩め「次は何食べよっかなー」なんて、割りばしを振り回しながら屋台を見回りている(完食早ッ)


「おれも何か食いてぇな」


目の前で、んなうまそうに食われちゃこっちの腹が減るってもんだ


「じゃあ綿あめ食べよ!」

「却下、腹にたまんねぇ」

「それなら林檎あめ!」

「何故あめにこだわる」

「…チョコバナナ?」

「テメェは一生その三つしか食わねぇ気か?」


しかも全部甘い。ふざけんな、食えるか

こっちは炭水化物がいいんだよ


「じゃあ、じゃあ…」

「焼きそば」

「!」

「…もしくはたこ焼きがいいな」


いや、お好み焼きも捨てがたい


とりあえず甘くなく腹にたまるものならなんでもいい。初めに見つけたやつを食うか、そう思って視線を少し先に向けると………あった、焼きそば


「うっし、焼きそば食おうぜ、焼きそば」

「……………」

「一つを分けるか?それとも二つ買うか?」

「……じゃ、じゃあ林檎あめで!」

「なんでそれにこだわる?」


何その林檎あめに対する執着心は


隣で林檎あめコールをするアルトをガン無視し、引きずるようにソースの匂いを漂わせるそこに足を進める

屋台に並ぶ人はいなく、作り置きもあるみたいなので直ぐ様食えるだろうと思い、屋台の兄ちゃんに頼もうとした瞬間





「や、焼きそばなんて邪道だぁ!!」

「おぶぅ…ッ!?」

「お客さん!?」


アルトのパンチがいい音を出しながらおれの鳩尾にめり込んだ(くっそ…!不覚!!)(じゃなくって、何してんだテメェは!?)

突然の出来事に固まる兄ちゃんに一言謝罪をいれ、横のアホを人通りのない横道に連れていった


こいつなんざの一撃に奇声をあげた自分が若干許せなかったが、それよりも今はアルトのこのおかしな行動の意図を説明してもらおうか


「返答しだいじゃお前の頬をルフィの如く引き伸ばす」

「ひぃ!そ、それだけはご勘弁を!!」


うっせぇ、さっさと言え


ややキレ気味のおれが怖いのか距離をあけようと体を反らすが、残念なことにおれの右手とアルトの左手は繋がっている

軽く睨むとアルトは顔を青くし、口を開けたと思ったら今度は赤くして黙ってしまう

青くしたり赤くしたり、忙しいやつだな、なんて思いながらころころ変わる表情を内心楽しんでいると、ぽつりぽつりとだがようやくわけを話し始めた





「あの、ですね」

「ん?」

「今回ので………ぃ…と、の!コンセプト?は"お手て繋いで"じゃないです、か」

「ん?あぁ、そうだな」


そんなこと言ったな、おれ


「林檎あめとかならいいけど…焼きそばとかって、ね?」

「は?」


なにが?


「…………………」

「?」

「…………………」

「………アルトー?」


え?今ので説明終わり?

いやいやいやいやいや、待てって。おかしいって。伝わってこねぇって


もう少し詳しく説明をしてくれることを願って名前を呼んだら、いまだに繋がっていた手と手からぎゅうっという効果音がした


「…………いじゃん」

「んあ?」













「焼きそばなんか持ってたら、手ぇ繋げないじゃん!」


左手に焼きそば、右手に割りばし、じゃあ私の手はどこにいけばよろしいのですかね!


……テンパり過ぎてんのか、アルトの語尾がおかしなことになっている





さぁて…どうしてくれようか、この生物

付き合う前からそうだったが、こいつの突然来るカウンター攻撃の威力はホント半端ない

この攻撃におれは何度もやられてきた





色気はなくても

ガキっぽくても

食い意地がはってても


惚れてしまえばそんなものいっさい関係なくなる





上がる体温

にじむ手汗

速くなる鼓動


どれもこれも付き合う前から変わっちゃいねぇ

…………けど、一つだけ違う、よな?


きつく握り締められている右手を振りほどき、おれはそのままその手を上に進めた











――――……




緊張してて

恥ずかしくて


それでもこの大きな手から離れたくなくて


大人じゃない私はこんな方法しか思い浮かばず、しまいにはゾロさんにパンチをしてしまった


う、ぎゃぁぁあぁあ…!!やっちゃったぁぁあ…!!


ど、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!!

これ怒られるよね!?んでもって、理由聞かれるよね!?


………うぁあぁぁあ!子供っぽいって思われるー!


やってしまったものはしかたがない、なんて開き直ることも出来ず固まってしまう。それでもゾロさんの鋭い眼差しから逃げることが出来なくて…諦めて話した


ため息つかれるかな

ほっぺた引っ張られるかな

それともグーパンチ?


どれもこれも嫌だが、ため息が一番嫌かもしれない(だって呆れられてるってことでしょ?)

だったら痛い方がまだマシ!なんて思い身構えていたら





がしりっ


「……………………ふへっ?」


ほっぺたを、掴まれた


引っ張る、のではなく掴まれるというその行為。痛みはまったくないが顔が固定されゾロさんとバッチリ目が合ってしまった





「……焼きそば」

「ふ?」

「諦めてやるよ」

「…ほんほ!?」


…う、上手く喋れない

け、けどやった!


先ほどは後悔ばかりしていたが、言ってよかった。ゾロさんと手を繋いでられる

ふひ、とおかしな体勢にも関わらず笑うと、ゾロさんもニヤリッとにこやかにわら………ん?にこやか???


「だから林檎あめ、貰うわ」

「ほ、ほへ?」

「ちょーど、ここにあるし」


そう言って、ゾロさんは私の口周りをひと舐めし…


……………………










「むっ!ぼぶべぇぇえ!!?」

「…ホンット、色気ねぇのな」


タイムタイムタイムタイムタイムタイムタイムタイムタイム!!

今失礼なこと言われたけど、ちょっとタイム!!


突然過ぎて、何がどうしてこうなったのかがわからない。とりあえず正座の一つでもして落ち着きたかったのだが、どうやら彼はそんなことさせる気はないようで





「…あぁ、ここにも赤いのあるな」

「むぅ!?」


な、なんで唇をなぞって………!?


「アルト」

「むぁい!?」

「林檎あめ、意外にうめぇや」









だから、おかわりいただきます





………私の訴えは、まるごと全てゾロさんにいただかれました





お祭り+デート

=林檎あめなんてもういらないよ!



(林檎あめ、食べねぇの?)(いらない!食べない!)(へぇ、)

(…まぁ、なくても別にいいけど)(…え?)(だっておれたち"恋人"、だろ?)(……………)