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おれは今物凄く不機嫌だ

もう一度声を大きくして言おう、人に八つ当たりしたいほど不機嫌だ


痛む腰を我慢しながら目の前で行き交う奴らを睨むように見つめる




ロビンに技を決められたのが大分前(だってよ、明るかった空が真っ暗なんだぜ?)、目を覚ませば見知らぬ裏路地にゴミのように捨てられていた

おれに何の恨みがあるのか知らねぇが、とりあえず仲間だろうが女だろうがなんだろうが真っ二つに斬ることをここにおれは誓う

ぶつけるところがなく溜まっていく一方の怒りを抑え、襟元を直した


目を覚ましたら何故か何時もの格好ではなく浴衣を着ていたおれ。混乱で数秒固まっていると懐に一枚のメモが

半放心状態のままそのメモに目を向けると、その場で待てとのこと

その瞬間は無駄に素直に従ったが…律儀に従うことなくねぇか?だってよ、おれ被害者だろ?


その場で五秒停止した後、大股のがに股で人混みを歩く(目指すはメリー号)(方向わかんのかって?)(んなもん、あれで大丈夫だろ)(第六感で)





ホント、おれが何したって言うんだよ

日頃の行いか?

………いや、悪かねぇ。だって寝てるだけだし

それなのに……チッ、人多すぎだろ!歩き難いな、おい!


右を見ても左を見ても人、人、人…(まぁ、祭りだしな)

家族、友達、恋人

ここにいる殆どが親しい仲の人間と楽しんでいるのに、自分は何故こんなところで一人でいるのだろうか


祭り自体は嫌いじゃない。人混み、は嫌いだが隣にあいつのあの笑顔さえあればだいぶ違ってくるはずだ





……………って、なに考えてんだおれは

暑さと苛立ちでついに頭がやられたかよ


…まぁ、多分原因は今日あいつと会話っつう会話をしてねぇからなんだろうな


朝、この祭りの話を聞いてルフィたちと騒いで、そのあとナミに捕まってから姿さえ見ていない


…あ゛ー、なんか無性に会いたくなった

会ってさわ…れなくてもいいから、あのアホ面を一目見てぇ





………うし、早いとこ船戻るか。じゃねぇと入れ違いになる


強引にこの人混み掻き分けていこうと足を踏み出す。それでもこの人の多さに思うように進めず舌打ちをした(いっそ蹴散らしていこうか)





むぎゅっ


「………………あ?」


腰に刀さえあれば先ほどの考えも実行できたのに、なんて自分でも馬鹿じゃねぇのと思うようなことを考えていたら右手が何かに掴まれた

ピースとピースがしっかり当てはまるようなこの感触。身に覚えのあるそれに何故か恐る恐る視線を右手に向けると……やっぱりお前か(そりゃ、間違えるわきゃねぇ)





「や、やっと捕まえた…」

「アルト、お前なにしてんだ」

「そっちがなにしてるのさ!勝手にどっか行っちゃって!」


手を掴んだ人物、それはおれが無性に会いたくて、声が聞きたくて、触れたかった大切な人


いろいろと聞きたいことがあったが、とりあえずおれは


「アルト」

「ん?」

「……笑え」

「え?」

「笑え」

「は?」

「………………」

「え゛!?ちょ、なんでくすぐっ…ふあっひゃっひゃっひゃ!やめへー!」


無性に見たかったアホ面を見るために、人混みのど真ん中でアルトの脇を擽ることにした(あぁ、なんでこれが和むんだろうな)





いらいら+むかむか

=解消するには白いあいつを



(ふひっ…ひー…急に何すんのさ!)(いや、気にすんな)(………)


(あー、落ち着いた)