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- ナノ -



私は恋をしました。叶わないとわかっている相手に

もし、願いが叶うなら…この恋が実らなくてもいい、だからそのお方に一目会いたいのです


そう毎晩寝る前に願っていたのが効いたのか、私は今そのお方の傍にいる


「あ、あのロロノア・ゾロさま」

「…あ?」

「本日の一日のご予定は?」

「なんでテメェに言う必要が」


斜め後ろに座り彼の背中に問う。最近漸く会話のキャッチボールをしてくれるようになったので、これでも進展はあった方だ



手配書の彼に恋に落ちて半年

そのロロノア・ゾロさまの乗る麦わら一味がこの島に来て暫く、私はそこそこ仲良くさしていただいている

「ここにいる間だけでいい、どうか彼の傍にいさして下さい」そうお願いしたら快く了承してくれた。…その際お礼の品を少々渡したらとても喜んで下さりました、よかった


今日も内容のない会話をし(内容なんてどうでもいいのです、会話をしているという事実があれば)、彼のトレーニング姿を眺める

迷惑そうにしながらもこの場にいさしてくれる彼はとても優しい


……と言うか迷惑かけてることに気づきながらもここにいる私って

いやしかし、これが恋心なのだから仕方ない


そんなダメな開き直りをしながら今日も貴方の姿を脳裏に焼き付け……って


「あ、ちょ…!ストップ!ストーップ!!」

「あ?…っ、おわ!?」


私なんかが到底持てるはずのないトレーニング器具を扱う彼のもとに飛び出す

そんな私に驚き後ずさるロロノア・ゾロさまに謝罪を入れ、拾ったものをずいっと差し出した


「ボタン?」

「はい!」

「………あぁ、おれのか。取れたんだな」


彼の服から取れたボタン。当の本人は「あってもなくても同じだ」と言って作業を再開させようとする


……しかしこればかりは譲れない!


「ダメです!」

「は?」

「こればっかりはいけません!」

「いや別に、」

「よくありません!」

「だから、」

「お洋服をお貸しください!」

「…………………」


私の気迫に負けたのか、はたまた面倒になったのかはわからないが、ロロノア・ゾロさまはしぶしぶお洋服こちらに渡してくれた

それを受け取り、いつも持ち歩いているソーイングセットを取り出した


「…なにしてんだ?」

「見ての通りです」

「あぁ、じゃなくて…なんで縫ってんだ?」

「…なんで?」


幼い頃から縫い物は女の仕事だと、料理や掃除も含めそう教えられてきた

男尊女卑などと言われるかもしれないが…まぁ、花嫁修行をするような家に生まれたのだからしかたない


それに


「ロロノア・ゾロさまにそのような格好をさせるわけにはいきません!」

「はっ?」

「男を立てるのは女の勤め!」


前に出ることはせず、後ろから付いていく。恥をかかせぬよう相手のことを常に気にする

それが女の、いえ


私の勤めです


縫う手を休めることなく言い切る。それから数秒、私の目の前にロロノア・ゾロさまは無表情のまま腰を下ろした(驚きのあまり針を指に刺してしまった)(い、いたい…)


「お嬢様育ちもここまでくると感心するな…」

「う、うぐっ…」


た、確かに世間一般からズレてるとよく言われますが……


「…いつも引っ付いてくるけど隣に来ねぇで、」

「へ?」

「それどころか一定の距離を保ちながらおれを見てんのも」

「う゛、」

「他のやつらが"さん"なのにおれには"さま"な上にフルネームなのも…よぉくわかった」

「いや、その…」





「でも、態度じゃあ丸分かりのくせに言葉で表さねぇのは一体どういうことだろうな」

「そ、れは…」


…こ、これは責められているのでしょうか

でもしかし、どうして…


俯けていた視線を上げ、一瞬だけ視線を合わせる。責めるような眼差しに怯えるよりも、こうして会話が出来ていることに喜んでいる私は変態なんかじゃない(絶対に!)


質問の答えを待つ目の前の彼に、私は小さな声で答えた





「好いて、る男性を立てるため」

「……………」

「あと、」

「………あと?」





やっぱり相手に「好き」と言われたい。そう思うのは、私のわがままでしょうか


叶わないと思っても傍にいたく、結ばれないとわかっても強く想ってしまうのは…


膝を覆う大きな洋服を持つ手が震える

私の言葉に応える彼の言葉が怖くて、そのまま無言でこの場から去ってくれることを願うが…そう甘くはない

ロロノア・ゾロさまはこちらを見つめながらゆっくりと口を開いた


「…わがままかどうかはしらねぇが、その告白の返事が欲しけりゃ三日後の夜、この場所でくれてやるよ」

「三日、後…?って、あの…ナミさんから二日後にはこの島を出ると」


聞いたのですが、そう続くはずだった言葉は彼に飲み込まれた

ゼロからゆっくりと離れていく顔を黙って見つめることしか出来ない(え、?)


「おれが言ってんのは返事が欲しいかどうかだ。この島に船がいようがいなかろうが、"この場所"にいれば答えてやるよ、わかったか?」

「え、ちょ…その、」


つまりそれは、私がこの船に…


「じゅうまんだ、」

「は、はい!?」

「わかった、か?」





混乱する、というのはこういうことだったのか。なんて訳のわからないことを考えながら、とりあえず頷いておく


「そーか。ま、楽しみにしとけよな」


今までに聞いたことのない優しい声と、唇に二度目の感覚。抵抗をする意思の欠片すらなかった(そう言えば名前、)(…初めてかも)






そんな私の意識がハッキリしてきたのは、再び指に針が刺さった頃だった

残された彼の洋服を握り締めながら緩む口ゆきゅっと引き締めた





無我夢中
【むがむちゅう】
一つの事にすっかり心をとらわれて、我を忘れて行動すること



「ゾロさま」

「あ?」

「いつから私のことを好きになったのですか?」

「あー…いつだっけな、忘れた」

「えぇー、」

「いいじゃねぇか、今こうして付き合ってんだろ」

「出会ったときはあんなに嫌な顔してたのに…」

「んだよ、文句あっか?」

「…ありません」

「…そうだな、少しなら"わがまま"言ってもいいぞ」

「え?じゃあゾロさまの後ろを歩き、」

「無理、却下」

「…………………」

「大人しくこのまま膝に座ってろ」







__________

葵さんからリクエスト頂きました!完成遅れてすみません…

「ゾロ相手のヒロイン片思い→両思い」とのリクエストでした、が…どうでしょう

やりたいことありすぎてまとまらなかったし、色々とツッコミ所が…

そしてヒロインを勝手にお嬢様設定に。…なんか中途半端な敬語になってしまいました

…名前変換が一回しかない作品ですが、気に入ってくれればと思ってます。いや、本当に申し訳ありません


それではリクエストありがとうございました!!