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先月、家族としても男としても好きなマルコ隊長から告白された


………と、いう夢だったかもしれない


水平線を眺めながら深いため息を一つ

あのときもこんな風に海を眺めていた

しかし、一緒に眺めていた隊長は三日前から姿を見ていない


……どこ行っちゃったのかなぁ

他の人に聞いても知らないって言うし、サッチ隊長に聞いたらニヤニヤしながら「さぁ?」なんて言うし

……絶対なんか知ってる!なんて思っても無理やり聞き出す、なんて失礼な真似は出来ない(随分前にやったけどね)(失礼なことを)

だから私はこうして待つことしか出来ないのだ



…会いたいな、って思うのはおこがましいだろうか



いや、そんなことはない!……といいよね、うん


あのとき、私告白されたもん、ね?

……でも、隊長この一ヶ月素っ気なかったよね…

前と変わらない感じだったよね…


…あー!もう!わけわかんないよ!


そう心の中で叫びながら頭を掻きむしる


…なんか、今の私は大丈夫だろうかな


一人海を眺めながら頭を抱え込む自分が心配になる(だって、なんか怪しい人だよね)


それもこれもいなくなった隊長のせいだ!なんて半ば八つ当たりをしていると





「ごまんだ」

「!」


三日ぶりの声が耳に届いた


今考えていた人物が背後にいることに驚き反射的に振り返る…とさらに驚いた


………そりゃ驚くよ

だって




「……ど、どうしたんですか、それ」

「………買ってきた」


大量の薔薇を両腕で抱えながら、その薔薇と同じくらい真っ赤にして立ってたら


彼の突然の行動に私はただ目を丸くすることしかできない


固まる私の前で隊長は軽く咳をし、背筋を伸ばした(もちろん、私も釣られて背筋を伸ばす)


「…ほら、先月おれがお前にしただろい?」

「へ?…あ、あぁ、はい」


何を、とは言ってないが多分告白のことだろう


「あんときはムードもへったくれもねぇもんになっちまった…だから、やり直す」


いつもはキョロキョロと忙しなく動く黒目がしっかりと私を捕らえた

そして隊長のゆっくりと口を動かす





……この一ヶ月、すまなかったよい

おれがしゃんとしねぇから不安にさせちまったよな

サッチたちにヘタレだのなんだの言われてるが、自分でもそう思う



でもよ、

こんなおれだけどよ、


「ごまんだのことがすっ…す……す…き、なの、は本当だから」





……あぁ、どうしよう





「おれと、付き合ってほしい……よい」


私、泣きそうだ(もちろん、嬉し涙)


じわり、と歪む視界

それでも隊長の姿はしっかり見えていて


彼の言葉に涙を堪えながら元気よく返事をしようと口を開く

開く、が…この場に響いたのは私の声ではなく


「……ぶふぁあッ!」


……男性の吹き出す声だった

そしてその声は止まらずに今度は絶えず笑っている


私と隊長は数回目をぱちくりさせ、声のする方に視線をやった


………それを見たとき、隊長のこめかみに青筋が浮かんだのは気のせいではないだろう


「マ、マル…お前…ッ!本当に薔薇買ってきたのかよ!?」

「サッチ…」

「ぶわははははッ!か、勘弁してくれー!女の子に薔薇プレゼントって…い、今時やらねぇっつーの!」


腹いてぇ!そう叫んだ4番隊隊長のサッチ隊長は目に涙を浮かべ、膝から崩れ落ちた

そんなサッチ隊長にマルコ隊長が怒らないはずもなく…


「サッチ、てめぇ…」

「うっ…うぇっほ!ちょ、待って…くれ!ぶふっ、わ、笑いが…!あひゃひゃひゃひゃ!!」


羞恥からか怒りからかわからないが、顔を真っ赤にさせながらサッチ隊長のもとへと足を進めていくマルコ隊長

彼はうずくまっているサッチ隊長を蹴りまくった





「ふふっ」

「!…ごまんだ、」


顔を赤くさせながらそんな風に暴れる隊長を見て、私は無意識に笑いがこぼれる

そして床に落ちている大量の薔薇の内、一本を拾い上げた


「確かに、今時薔薇なんて贈りませんね」

「!!」


それでも隊長は一生懸命考えてくれたのだろう(だって隊長こんなことする人じゃないし)

あからさまにショックを受ける隊長に優しく笑いかける


「マルコ隊長、」

「な、なんだよい…」

「真っ赤な薔薇、ありがとうございます」


とっても嬉しかったです




………でも、


そんなたくさんの素敵な薔薇より私は


「隊長の綺麗な青が好きです」

「ッ!!」


だからもう三日もいなくなるなんてことはしないで、ずっと隣にいさして下さい


そう静かに呟き、恥ずかしさから手の中の薔薇を見つめていたら、目に写る世界が青一色になった








マルコ隊長に抱きつかれていることに気づいた私が悲鳴をあげるのは、あと数秒後