お?あそこのお二人さんは…… 一服しようと甲板に出てすぐ見えた大小二つの人影 そこから放たれる雰囲気はどうも甘ったるい やれやれ…おれらの兄貴様は何をやってんだかねぇ いい年のくせにあと一歩が踏み出せず、ヘタレっぷりを辺りにさらけ出している兄、もといマルコ 今だって耳まで赤くしてるのがここからでもわかる …サッチが泣きながら怒るのもわかるな、ありゃあ しかもあれ、マルコは気づいてんだろ 互いに想い合ってること 今はあんな状態だが、あれでも白ひげ海賊団をまとめる隊長の一人なんだからそこまで鈍くはない…はずだ 「あの、な、ごまんだ」 「はい、なんでしょう」 「その………す」 「す?」 「……………き、焼きって、うまいよな」 「はぁ、まぁそうですね」 ……………ベタすぎるぞ、マルコ そして鈍すぎるぞ、キミ 告白しようと努力はしているが結局はヘタレなマルコに、その努力に気づかない鈍感な彼女 これじゃあ二人の関係が進展しねぇはずだ ……しゃあねぇな、このおれが一肌脱ぐか 首元を掻きながら海を眺めている二人に声をかけた 「よぉ、お二人さん」 「……げ、イゾウ」 「こ、こんにちは!」 おぉ、元気のいい子だ それに真面目でかわいらしい ………横のオッサンと違って 元からよくなかった目付きをさらに悪くしこちらを睨んでくるマルコにやれやれ、とため息を一つ(邪魔だっていいてぇのかよ) とりあえず手持ちの煙管から吸った煙を吐きかけてやる 「う゛…おまっ、ゲホッ……に、すんだよいっ!」 「ヘタレなマルコに副流煙をプレゼント」 「ふざけ、んな!」 ふざけんな?ふざけてんのはどっちだか… 煙にやられ噎せる中年を視界から消し、かわいらしい妹と向き合う(名前はごまんだ、だったよな) 心配そうにマルコを見つめる彼女の頭を撫でてやった 「なぁ、ごまんだ。いつまで経っても好きな奴に告白できねぇヘタレた野郎の方がふざけてるとは思わねぇか?」 「へ?」 「は!?イゾ、おま!?」 「待つ身はつれぇよなぁ?」 いい子いい子しながらキョトンとするごまんだを撫でてやると、背後のオッサンが騒ぎ始めた それをとことん無視し続ける そんな態度のおれに軽くキレたマルコは 「告白ぐれぇできるってんだ!」 なんて叫んだ その台詞に、じゃあやってみろよ、なんてニヤつきながら言ってやる ホント、恋ってやつは凄いねぇ… あのマルコがこんなになるなんて 「ごまんだ!」 「は、はいぃい!?」 「好きだよい!」 「はいぃい!………はい?」 「…………………あ」 「…クッ」 あ、ってなんだよ。思わず言っちまったって顔しやがって 間抜け面なマルコを見てこぼれてしまった笑い 肩を揺らしながらなんとか抑えてみるが 「い、今の…ナシだよいぃい!!」 「ブフッ!…ッはっはっはっはっは!」 ダメだ!抑えきれねぇ! ボボボッと腕を不死鳥の羽にし飛んでいく顔が真っ赤なオッサン(どこ行く気だよ!) その姿は、いつもの冷静なあいつからは想像できないもの 「あ゛ー…腹いてぇや…………なぁ、ごまんだ」 「へ、あ!は、はい!」 あー、可愛い可愛い 顔真っ赤だ マルコが羨ましいねぇ 笑いすぎて勝手に込み上げてきた涙を拭いながら、顔の赤い彼女に笑いかけてやる 結果は、わかってるが 「あのバカに返事をくれてやってくれ」 そしたら もっとおもしれぇもんが見れる 協力目的が変わってきてしまったが…まぁ、いいか 終わりよければ全てよし、だ そのあとマルコはごまんだのでっかい「私も大好きです!」の一言により、綺麗な水しぶきをあげながら海に落ちていった 助けなきゃいけないってのはわかってんだが… 無理だ!マルコ、お前… おもしろすぎ!! 完全に おれのツボだよ |