桜が有名な島が近くにあると聞き、なら行くしかねぇだろう、というオヤジの掛け声で進路を変えた 酒やツマミを大量に持ち込み、大勢で桜の下を陣取る 満開の桜、それを見れば誰しも騒ぎたくなるだろうが 「…き、綺麗ですね」 「…だな」 ………緊張して、桜なんざ見てるひまがねぇ 飲み物片手に肩を並べ硬直 サッチに無理矢理つれてこられ、ふと横を見ればいつの間にかごまんだがいた(…その時点で頭ん中が真っ白) 自分的には冷静にしているつもりなのだが、第三者から見たら落ち着きがないかもしれない(いや、絶対にそうだな) 会話が途中で途切れ、どうしたらいいかわからなくなり視線を隣に移すと 「………!」 ごまんだがそれに気付き 「…ふふっ」 笑った それはもう周りの桜に負けないぐらいの綺麗さ(恋は盲目ってやつか?)(…いや、実際そうなんだよい!) 反らそうにも反らせず、笑い返すことなんてもっと出来ない とことんダメな自分を罵りながら(ヘタレ!)(オッサン!)(…意気地のねぇ野郎!)さらに硬直していると、強い風が吹いた それにより巻き上げられる花びらたち なかなか見ることの出来ないその絶景にごまんだは立ち上がって目を輝かせた 「隊長!すごいですね!」 「…そうだねい」 「私、こんなに楽しい花見初めてです!」 キャッキャッ、と喜ぶ彼女にまた頬を染めながら見ていると、先程舞った花びらが髪についていることに気づいた それもそれでかわいいのだが、本人のことを考えると取ってやった方がいいのだろうと思い手を伸ばす 「ごまんだ、」 「!」 「付いてたよい」 綺麗なピンク色のそれを摘まんで見せてやると、徐々に赤く染まっていく彼女の頬(そしてそのまま硬直) ……な、なんだいその表情は! そういったところのかわいさをそろそろ教えて注意してやりたい、なんて思い悶えていると、我が船唯一の茶髪リーゼントが泣きながらおれの頭を殴ってきた もちろん、それに怒らないおれではない 「…ッに、すんだい!」 「うるせぇ!バカバナナァァア!!」 「んだと!?」 殴ったうえに悪口までいうかい!? そっちがその気なら、とこちらも拳を作るが 「わかった、謝る。お前をここに連れてきたおれが悪かった!でもなマルコ、お前自身も考えてくれ。相手も誰もいねぇ独り身のおれらにはテメェらのその甘ったるい雰囲気は拷問なんだよ。わかるか?おれの言いたいこと、わかるか!?」 「………ノンブレス、お疲れ様だねい」 こいつのあまりの気迫に怒りがどっかに行ってしまった そして仕方なくサッチの台詞の意味を考える 考えて数秒 「…………………」 「わかったか?」 「…………………」 顔に熱が集まった ……つまり、あれか こいつはおれら二人から恋人のような雰囲気が出てたと言いたいのか …………た、確かに心当たりは、ある ぱん、と手で目を覆い項垂れる(そんなつもりは、なかったのに) もはやリンゴのように真っ赤な耳を隠す気力は残っていなかった 「サッチ隊長、ありがとうございます…!」 「おぉ、辛いよな…両片想い同士が無意識にイチャついてるものほど質の悪いもんはねぇよな…」 「おいサッチー、なんであの二人は真っ赤な顔で固まってんだー?」 「色気より食い気なエースくんは黙ってなさい」 被害者多数 ご注意ください |