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「…………よっし!」


きゅ!と髪を縛り部屋の扉を開けた

手にはラッピングされた小さめの袋

それを隠しながら辺りをキョロキョロと見回し船内を歩く




今日は女の決戦の日…………そう、バレンタインデー

仲のいい人に義理チョコをあげる人もいれば、片想いの相手に本命チョコをあげる人だっている


…あ、ちなみに私は後者のつもりです


「よぉごまんだ!」

「はうわっ!?」

「なんだそりゃ、おもしろいなぁ!アッハッハッハ」


同じ隊の皆さんから挨拶がてらに背中を叩かれた


…痛いけど、まぁ、いいとしよう、それは

でもね


「さぁ、ナースの皆さまはどこかなー?」

「あっちじゃね?」

「よし、行くか」


…………………なんでそんなお洒落な格好を、してるのでしょうか?


まるでよそ行きの服装


他にも髪をとかしたり、香水を付けたりと様々だが…これはあれだ

絶対にバレンタインを意識している


互いに服装などを誉め合う仲間を見てため息を吐く(なんというか…)(お疲れ様)

それと同時に沸き上がってきたのは不安



甲板に出てそこら辺に腰かけた


………皆、ナースさんの方がいいのかなぁ




確かにこの船のナースさんたちはべっぴんさんだ

お色気むんむんだ


………だからって、ここまで綺麗に相手にされないのはさすがに傷つく(ぐすん)


明らかに私を女としてカウントしていなかった先程の数人に怒り二割に悲しみ八割

再び吐き出されたため息には諦めが含まれていた


「…………食べちゃうか、自分で」


せっかくコックさんにキッチンを借りて作ったのになぁ


…………所詮カップケーキですけどね、ふん!


不器用ながら一生懸命ラッピングしたそれを外し、中から出した(うん、美味しそう)(我ながら頑張りました)


まだ今日は始まったばかりだけど、私は早々に諦めさしていただきます(全世界の乙女さん、ファイト!)



ひょいっ


「…ん?」


大口を開け食べようとしたら、手の中の物がなくなった

その口を開けたまま視線を横にずらすと、まるでリスのように食べ物を頬張るマルコ隊長の姿があり、少し閉じかかっていた口をまた大きく開けた


「うまいよい」


一口、二口と食べられていくのは私が持っていたはずのカップケーキであり、それを隊長が取ったのがわかった

わかった、が………何故当然のごとく食べているのだろうか


あまりにもじっとその様子を見つめていたせいか、ここでようやくこちらを見る隊長(あ、まだモゴモゴしてる)


「これ作ったの、ごまんだだろい?」

「え、まぁ…そうですが」

「ん、うめぇよいっ」

「あ、ありがとうございます」


疑問が浮かんだが……嬉しそうに食べてるので、いっかなと思う(それに隊長にあげるつもりだったし)

そこまで大きくないカップケーキはすぐに完食された


予定とは狂ってしまったが、あげられてよかった


「わりぃな、食っちまって。誰かにやるつもりだったんだろい?」

「いいですよー、隊長のために作ったんですからー」

「……………よい?」

「……………?」


口癖である二文字を呟き固まってしまった隊長

その様子に首をかしげたが、自分の発した言葉の内容に気付き私も固まる














「……お?マルコじゃねーか!どうしたんだよ、顔赤くしてー!……お?あんたも平気か?マルコと同じくらい赤いぞー?」

「……エー、ス隊長」


固まって動けないでいると、エース隊長がとてもナイスなタイミングで現れた

先に我に返ったのはマルコ隊長だった



「………ご、ち…そう、さん!」


だよい!と言いながら走り去っていく隊長

エース隊長は「なんなんだぁ?」と呟くが、あいにくそれに答える余裕はない




とりあえず私はあのカップケーキが本命であることがバレないよう祈った(お願い隊長、鈍感であってください!)