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いつもしっかりしてて頼りになる人が弱ってたりしてら、その人には申し訳ないが胸がキュンッとしてしまう

それが好きな人ならなおさらだ


「…ぶぇっくしょい!」

「はい、ティッシュです」

「あ゛ー…ありがとよい」


ズズッと鼻をすするマルコ隊長

顔は赤く、声もいつもと違って掠れている

先程、ナースの皆さんの診断によりマルコ隊長は数年ぶりの風邪と見なされたのだ


「やっぱ風邪なんか引きたくねぇなぁ…」

「海になんか落ちるからですよ」


まぁ、原因は私なんですけどね


いくらイゾウ隊長にそそのかされたからといって、自分でもあれはない思う

あれはもう誕生日プレゼントと称した私の願望だ、欲望だ


………あ、自分でいってて恥ずかしくなってきた


あんなこと、思い出しても誰も得しない

早々に忘れて、隊長の看病に専念しなくては


そう意気込んでいたら隊長が手をちょいちょい動かしながら私を呼んだ


「………ごまんだ」

「はい、なんで…」


しょう、と声を出しながら近づいたが音は最後まで発することなく私の喉へと戻ってきた

もしかすると隊長の風邪が移ったかもしれない

そう思うぐらい頬に熱を持った私は、全身を硬直させた


そんな私に気づいてないのか…隊長はふにゃり、といつもは見せないような笑みを浮かべながらずっと私の頬を撫でている(かわいいけど)(マルコ隊長、とってもかわいい、)(けど…!)


「あれはなぁ、おれも情けなかったと思うよい」

「………あ、あの」

「でもしてぇって気持ちはあったし、今もある」


だから


そこまで言って優しく撫でるように動かしていた手に力を入れ、ガシリと私の顔を掴んだ

そして風邪のせいで掠れた声でまるで挨拶をするかのようにさらりと隊長はとんでもないことを言った





「ここで、するよい。もちろん詫びも込めておつりもやるよい」

「隊長おぉぉぉおおお!!」


お願いですから目を覚ましてェェェエ!!


いつもの隊長の口からじゃ、聞けないような台詞

しかもまさかのおつり宣言に私の頭は破裂しそうだった(パーン!と、)


「遠慮すんなよい」

「隊長!待ってください!落ち着いてください!」

「おれは落ち着いてるから平気だい」

「平気違いますよ!隊長風邪引いて……って、あつぅ!隊長おでこが尋常じゃないくらい熱いです!」

「ごまんだを想ってハートがオーバーヒート」

「キャラ違いますけど!?」


真顔でサッチ隊長のようなことを言うマルコ隊長

どうやら彼は風邪で思考回路がぶっとんでしまったらしい(先程触れた額が熱すぎたし)


病人とは思えない力の隊長と攻防戦をすること数秒、やはり風邪がそうとう酷いようで急にパタリと倒れてしまった

それを見て心配より安心をしてしまった私は心の中で隊長に謝る


「う゛…気持ちわりぃ…」

「だ、大丈夫ですか?」


……いや、んなわけないよね。こんなにしんどそうなんだし





「…なぁ、ごまんだ」

「はい、なんですか」

「嫌だったら聞き流してくれてもかまわねぇ」

「はぁ」


いったいどうしたのだろうか


こちらに視線を合わせることなく天井をジッと見つめる隊長

できるだけ要望に応えてあげようと、彼の言葉を待つ













「………今日一緒に寝てください」


よい













「………………」


静まり返る室内




どうしよう、とても可愛らしい人がいるんだけど

女の私より可愛らしい人がいるんだけど


風邪を引くとやはり人肌が恋しくなるのだろうが、いやしかし、どうしようこの人

ピストルを、しかもゼロ距離で食らったかのような感覚(いや、ないけどさ)

正直いって一緒に寝たりなんかしたら自分の心臓が止まってしまうかもしれない


しかし、私がこのお願いを断れるはずがなかった





だって私


「…いいですよ」

「!」


隊長のことが大好きだから






こうして緊張しながらも隊長と一緒に寝た翌朝、彼特有の語尾が混ざった悲鳴が早朝のモビーディック号に響き渡った(…風邪で記憶がブッ飛んでますね)