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「とぅっとぅるー」

「……………」


いきなりで悪いが、こいつはバカだ

今も意味不明なメロディーを口ずさんでいる


「とぅるっとぅーとぅーらー」


………あぁ、もう
意味がわかんねぇよ

なんの歌だ、おい


はぁ、とため息をつく

こんなおかしいやつだが、根は良い奴なんだ

小さい頃からの付き合いだからそこんとこはよくわかっている


ただ、バカなだけなんだ


土砂降りのなか野良猫を、自分がずぶ濡れになりながらも必死で守ったことがある

花壇の花を踏み荒らす近所の年上の奴らに、無謀にも立ち向かっていったこともある

高い木の枝に風船を引っ掛けて泣いてる子供のために、高所恐怖症のくせして登ってったこともある




………こいつは後先考えねェ優しいバカなだけなんだよ








うん………

あぁ、嘘

………やっぱただのバカ





「どこ行きやがった、あの野郎…」


前方にいたはずのバカはいつの間にか姿を消していた

頭痛を感じ、こめかみを押さえ舌打ちをする


ッのバカは心配しかかけねぇのか……!


締まりのない笑顔と、色気のない笑い声を思い出しながら辺りを見回す


「うひひー!シカマルさーん!なにかお探しですかー?」

「…………」


いた

いやがった


どこかで買ってきたらしい団子を頬張りながら、こちらにやって来た





「あ、」

「バッ…!!」




べしゃ




・・・・『べしゃ』?


半ば予想してた、こけやがった

驚きはしたが、まぁ…いい
予想してたから

だから受け止めることができた、が


不快な音がした
胸らへんから


…………


「………怒っていいか?」

「………ごめんなさい」


周りから見れば、俺は抱きしめあっている恋人同士にでも見えるだろう

だが、そんな甘ったるい雰囲気は出していない


……こいつッ…服に団子を付けやがった……!!


遠くの景色を見つめる
あいにく、自分の胸元を見る元気はなかった


……ホント、こいつこんなんで大丈夫かよ


将来が心配なんだけど

いつか大怪我すんぞ

あぁ、頭の方も心配だ

いつか騙されるぞ


くそっ……だから目が離せないんだよ!


「頼むから…もう少ししっかりしてくれ……」

「!」


腕の中で団子を頬張りながらこちらを見上げてきた


「お前は危なっかしいんだよ」

「あ、うん…ごめんちゃい」


あーうん、わかってねぇな
こりゃダメだ


「心配いらないのだー」

「アホか、心配だっつーの」

「だってぇ〜、とぅりゃりゃ〜」


あぁ、また歌い始めた…











「うち専用の愛しのヒーローさんが助けてくれるもんねぇ〜」

「……ッ!」

「とぅりゅりららぁ〜」


……このバカにときめくオレはもっとバカなのだろうか






たすけてね、ヒーロー



雨のとき、猫ちゃん守るとき一緒にいてくれた

喧嘩しに行ったとき、代わりに殴り飛ばしてくれた

木に登るとき、いつ落ちてもいいように傍にいてくれた



あなたがいるから無茶できる


これからもよろしくね!ヒーローさん!



とぅるっとぅーん!