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ガヤガヤと、夜中にも関わらず人気が多いここは、町唯一の酒場

そこの数少ない店員の私は今夜も忙しく働いています


「いちまんちゃーん!これ運んでー!」

「はーい!」

「いちまんちゃん!この皿洗ってー!」

「はい!」

「いちまんちゃーん!注文とってきてー!」

「はいぃ!」


あぁ、もう!今日はホント忙しい!!


店内をあっちへバタバタ、そっちへバタバタと動き回り、店長に頼まれた注文をとりにいく


「お待たせしました!ご注文は?」


紙とペンを片手に注文を待っている、のだがその注文が一向にこない

不思議に思い顔をあげるとそこには、ジッとこちらを見つめている一人の男性


わぁ…顔が整ってて綺麗な人だなぁ

あ、でも目元の隈がもったいないや


「船長?酒頼まないんですか?」


一緒のテーブルにいた人がほろ酔い気味に聞いてくる


あ、この人船長さんなんだ

………って、注文!


「あの、ご注文…」

「いちまん、っていったな」

「あ、はい」


店長が大声で呼んでたし、知っていても不思議じゃない


…不思議、じゃないのですが


相変わらずのこの視線、瞬きすらしない瞳に戸惑っているとガシッと腕を掴まれる


「あ、あの…?」

「せ、船長……?」


突然のことで一緒にいる船員さんも驚く
その様子に気付いた周りも黙り始めこちらを見てくる

ざわざわと騒がしかった店内が静かになり、店長が心配そうにこちらを見ているのがわかった


い、いいい、いったいなんなの!?


カチーンと硬直してしまった私に、目の前の船長さんはニタリと笑い


「オレの女になれ」


と言い放った


「は、い?」

「簡潔に言う、一目惚れした。だからオレの女になれ」

「いやいやいや…」

「お前に選択権はねぇ」


なんなのー!?このひとー!?!


助けを求め店長に視線を向けるが、店長はこの人の告白を固唾を飲んで見守っている


……店長、あなたはこの人の味方なんですか!?


店長だけではない、この店にいる全員がこの告白を見守っている


「…わ、私あなたのこと知りません」

「これから知ればいい」

「でも、好きになるとは限りませんし」

「絶対惚れさせるから安心しろ」


なにに安心!?
もうどうすればいいのー!?


「なぁ…」

「はい?…ッ!?」

「………いいだろ?」


掴んでいる腕をを頬に持ってかれ、そのまま唇に移動させる
ツツツ、と動いてきた唇は手の平へ、手の平から指先へと運ばれる


こ、この人!タラシだ!手慣れてる!

こうやっていつも女の人を誘っててたんだ!






…でも、


「………オレは本気だ」


そんな目で見つめられたら


「……頼むから、オレんとこにこい」


惚れさせられてしまう


「………ぉ、」

「?」

「お友達から……」


私の呟きは静まり返っている店の中ではよく響いた

そして次の瞬間


「やったなぁ!にいちゃん!」


ワァァア!と歓声が

店内のお客さんや、この人の船員さん、さらに店長までもが拍手をしながら喜んでいる


「よかったですね!船長!」

「毎日この店見つめてたのはこれだったんですね!」

「うるせぇ…」


皆が手を取り合い喜んでいる
中には涙を流す人も


……なんなの、この状況


「友達、か…」

「!」

「…ま、気長にいくか」


ニヤリ、と笑う船長さん

彼のものになるのも、どうやらそう遠くはなさそうだ









世界中を味方につけて
私の勝ち目はなさそうだ



(ところで、お名前は…?)

(トラファルガー・ローだ)

(トラファルガーさん…)

(んぁ?)

(……私の負けです)