そこまで言わなくても…
「アルト、そのペンキ取ってくれ」
「はい、どーぞ」
「サンキュー」
海賊旗を描くべく、ペンキ片手に意気込むルフィさん
その横でその様子を見守る私だが……
「あー、ちょっと失敗しちまったかな」
「いやいやいや…」
大分事故が起こってますよ？
ルフィさんの描いた海賊旗には、彼のトレードマークである帽子を被ったドクロ
……と呼べるかわからないものだった
こ、これが船に…？
……………
…想像したら、ゾッとしてしまった……ッ！
これをつけて航海するなんて、私も嫌だし他の皆も嫌だろう
ここは一つ、私が…
「描かせていただきます！」
「おぉ！やれアルト！」
まかせなさーい！
「………酷いな」
「これが、海賊旗？」
「…掲げたくねェぞ、こんなの」
「こ、こんなの！？」
完成した海賊旗をみんなに見せたら引かれてしまった
確かに私は絵は得意な方ではない、が…ここまで言われると傷つく物がある
ガクーとうなだれていると後ろで大爆笑していたルフィさんが横に出てきた
「なっはっはっはっ！やっぱこっちの方がいいだろ！」
「「「そっちはもっと嫌」」」
「なにィ！？」
私同様（それより酷いかも）にズバッと言われたルフィさんは、これまた私同様にガクーとうなだれた
「しかたねェ…おれが描くか」
「上手に描けるの？」
「あれ見た後ならなんでも上手に見えるだろ」
「「……………」」
無言で見つめ合う私とルフィさん
今、私たちの心は一つになった
（（ウソップ／さん…
描きミスれ………ッ！！））
「ウソップさんすっごー！！」
「ふふん、おれは芸術に長けてるんだぜ」
「うん、上手い！」
「これで"海賊船ゴーイング・メリー号"の完成だ！！」
数十分前の恨みなど、遠く彼方に飛んでいってしまうほどの上手な海賊旗
思わず拍手を贈る
帆の方のマークもウソップさんの画力に任せ、無事海賊船が完成した（ちなみに、私とルフィさんの海賊旗はナミさんとゾロさんによって裂かれた）（また二人で涙しました…）
「そうだアルト！ちょっとこい！」
「うわわっ！」
突然ルフィさんに担がれた
混乱しながら連れて来られた場所には
「海賊船完成祝いに一発、なんてのはどうだ？」
「大砲…」
が、あった
輝かしい笑顔で撃つ用意を始める彼
祝い…それもいいな！
よし
彼の案にノッた私も大砲の用意を手伝う
一番手を譲ってくれた彼に甘え、撃つ体制をとる
「どれ狙うんですか？」
「そうだな…あの岩場でいいんじゃねェか？」
「はい！」
よーし、当ててやるぞ…
狙いを定めた私は導火線に火を点した
それでは……
アルト、いっきまーす！
ドオーン！！
ぼちゃーん！
しかし、私の撃った弾は掠ることなく海に落ちていった
「全然ダメだなー、貸してみろ！」
「くそう…」
悔しがる私を退かし、弾を詰め始めるルフィさん
その途中、私の撃った音に驚いたウソップさんがやってきた
「なんだ？あの岩狙ってんのか？」
「はい、でも…」
ドオーン！！
ぼちゃーん！
「………当たらないんです」
「くっそー！」
「私の方が上手！」
「なにー！？」
悔しがるルフィさんを今度はウソップさんが退かす
自信満々の彼が導火線に火を点す
勢いよく飛び出していった弾は綺麗に孤を描き
ドゴォオンッ！！
見事に命中させた
「すげーー、当たった一発で！！」
「うげっ！当たった一発で！！」
「かっこいー！当たった一発で！！」
三人で砕け散った岩を見つめる
先程までの形を成していない岩
はあー…私はあんなに反らしたのに
ウソップさんに尊敬の眼差しを向けると、肩を組まれた
「なんだ？あぁ、そうか…よし、アルト！おれのことをキャプテンウソップと呼んでもいいぜ？呼びたいんだろ？」
「え？」
「あー、腹減ったー。アルトなんか食おうぜ」
「こんなだらしない奴が船長なんて嫌だよなぁ。しかたねェ！おれが船長になってやらァ！」
「あ、待ってくださーい」
「ナミー！なんか作ってくれー」
「有料よ」
「何故！？」
「えー」
「……………」
「なにしてんだ？ウソップ」
「ゾロ…おれは心が折れそうだ」
「？…とりあえず、中行くぞ」
大砲＋ドカン！
＝きっかけの一発
（はい、焼き魚）（いただきます！）（…って、なんでおれにはないんだ！）（当たり前でしょ）
（…あの海賊船だな）
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