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「なおったーーーーっ!!」

「おー!すごー!」


見事元通りになった麦藁帽子と、それをなおしたナミさんに拍手を贈る


よかったよかった


縁に腕を置いて海を眺める

ちなみに治療のために、今はナミさんの船にお邪魔している


普通に服を脱ごうとしたらゾロさんとナミさんに怒られた



もっと女として自覚を持て、と



………うん、よく言われる





「はい」

「!」

「お腹、空いてるでしょ?」


差し出されたパンをいただく

見るとゾロさんも食べていた


「あ、ありがとうございます!」



「…………」

「…………」

「おっ、島だ」


確かに島が見える

しかし、そこは無人島らしいが


我ら(あ、私は含まれてないからね!)が船長のルフィさんには関係がなかったらしく、そのまま無人島に向かって行った


「ちょっと!あいつらはなんで人の話を聞かないの!?」

「そ、そんなの私が知りたいですよ!」


ほっとくわけにもいかないので、彼らの船を追いかける




彼らは…まぁ

自由人だから


特にルフィさん










「何もねェ島だなァ!」

「だから無人島だって言ってるでしょ」

「あ、ゾロ寝てやがる!」


あ、ほんとだ

気持ちよさそう


あんな元気そうだったので忘れていたのだが、彼が1番重傷だったのだ

ナミさんが寝かしておこう、と言ったがその通りだと思う


その流れで、私も残ることになってしまった


まぁ、いいけどね


森の奥に進んで行った二人を見送った私も、一緒に寝転ぶ











「………落ち着かない」


むくり、と起き上がる


せっかくだから釣りでもしよう

……餌、ないけど



形だけでも、と思い糸を垂らす













「…………」


静かだなぁ


波の音とゾロさんのいびきしか聞こえ…




ズドーン…



「・・・・・」


…静カダナァ


波の音とゾロさんのいびきしか聞こえないよ



銃声?

ハッ!まさか、ね…







ギッ…


「!」

「ふわぁ…」


背後から物音

それに気付いたときには背中が少し重く、暖かかった


「釣れてるか?」


どうやらゾロさんが背中に寄り掛かっているらしい


「餌がないですから、バカな魚でも釣れませんよ」

「ははっ、そりゃそうか」


笑う彼の振動が伝わってくる


というか、ゾロさん

あなたは寝てなくては…?


そう言っても生返事の彼

はぁ、とため息をついて糸を見つめる(釣れないけどね)


「おれの怪我は、」

「はい?」

「寝りゃあ治る」

「……………」


それもどうかと…


「けど、お前のそれはほっといても治らねぇぞ」

「………ッえ?」


彼の言っている意味が分からず振り向く

すると視線が合った


「無理には聞かねぇが、おれどころか昨日知り合ったばかりのナミでさえ気付いたんだ」

「な、なにを…?」


釣竿を握る手に力が入る


「吐き出せるうちに吐いとけ

待っててやるから」


その言葉を最後にゾロさんは黙ってしまった

私は何も言えず俯く





彼は…わかったのか

そしてナミさんも



ゾロさんが言いたかったことは、多分…私が思っていることを言え、ってことだと思う

上手くごまかしていたつもりだが、確かに私は今猛烈に落ち込んでいる


……あーあ、なんで私の周りにはこう……

鋭い人がいるんだろう


ふふ、と少し笑い、背中のゾロさんに声をかけた、が



「くあー…」


寝とるーー!!?


まさかの展開にガボーン!とショックを受けてしまった

しかし、先程ゾロさんが言っていたように、溜め込んで皆に心配をかけるのは良くない

だから寝てはいるがゾロさんに聞いてもらおうと口を開いた


「ゾロさん…」

「がーっ」

「………私、自分が嫌いです」


寝ている相手に話しかける姿は滑稽だが、なんだか少し心が軽くなった気がした

私は止まることなく話し続けた


「ゾロさんもわかってるでしょうが、私泣き虫なんです。泣き虫で意気地無しなんです。
こうして海に出ることも、怖くて怖くて、たまらない。

そんな自分が嫌で嫌でしかたが、ないんですよ。

でも、あなたたちといて、少しは勇気がつきました




そう、思ってたんです…」


ホントに思っていた


モーガン大佐のところで、彼らを守るように飛び出したとき


あぁ、私も成長したんだなぁ


そう感じたんだ




でも実際は


「ッなにも、変わっちゃなかったんだ!

わだじのッ…せいで!ぞろさんは…刺されたんだッ!!」


私があのとき、一言でも叫んでいれば彼は無事だったかもしれない


「ワン゛コだってッ!あの店を失うことはながったッ!!」


私が泣き虫だから

私が意気地無しだから

私が勇気を持っていないから



私が弱いから






今も、昔も

そしてこれからも


「ごめっなざい゛ぃ…ッ!!」


私じゃ、守れないんだ
















「…で、それだけか?」

「ッ!?」

「なにを悩んでるかと思えば…」


寝ていたはずのゾロさんが、私の釣竿をとりあげ脇に置く

そして私を体ごとこちらに向かせた

涙や鼻水を垂らしている私とゾロさんが向き合う


「一言でいうと、





くだらねェ」

「な゛っ!?」


ガボーンッ!!


こ、このやろ!
人が真剣に悩んでるっつーのに!!


「この傷がアルトのせいィ?なわけあるか。

こりゃおれの不注意だ。お前は一切関係ねェ



確かにお前は泣き虫だ。それは否定しねェ…だが、誰も意気地がねぇなんざ思っちゃいねぇよ

少なくとも、おれらはな」

「でも゛ッ…」

「まだ黙っとけ

だいたい、あの犬の店に関しては十分すぎるくらい戦ったじゃねェか

それなのに謝られたら、すぐ近くで寝てたおれはどうなる」

「そっ、それは…私のせいで出来た怪我が…」

「だから違うっつの!

いいか?おれらは仲間なんだ!」

「な゛かま…ッ」

「そうだ、だから一々気にすんな

だいたいそんなに泣かれたらおれが死んだみてェじゃねぇか」


ゴシゴシと乱暴に涙を拭かれる


「…ゾロさんは」

「あ?」

「私みたいな泣き虫はッ…嫌いですか…?」


赤ん坊みたいにピーピー泣く私は嫌いですか?







「ただの泣き虫は嫌いだな」

「ッ!」

「でも、お前みたいな泣き虫は嫌いじゃねぇ」

「お前、みたいな?」

「こうも真っ直ぐ泣かれると逆に気持ちいい」

「ま、真っ直ぐ?」


どういうことだ?



………うーん、

よくわからないけど、とりあえず褒められてる?


「それに、弱いっつーならこれから強くなればいいだけだ

わかったか?」

「…うん!」


やっぱり優しいな


私があんなに悩んでいたのに、ゾロさんに話したらスッキリした

にへー、とだらしなく笑うと小脇に抱えられる


「まぁ、泣いてるより笑ってる方がいいけどな」

「な、なんですか?」

「なんでもねェよ。おら、寝るぞ」

「はーい」


抱えられてゾロさんたちの船に戻り、二人仲良く並びながら寝た





私+ゾロさん

=ちっぽけな悩み



(ゾロー!アルトー!今帰った…)(あらまぁ、幸せそうに寝ちゃって)(ずりィぞ、ゾロ!)

((くあーー……))