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入れ所と抜き所



七武海に目をつけられたり、追手がやってきたりといろいろと問題が起こったが…とりあえず進まなければ話は始まらない

寝ていたサンジくんたちにも状況をちゃんと説明し、今後に備えて





「野郎共!スペシャルドリンクでも飲んどけ!」

「「「おぉー!」」」



「ド、ドリ…ッ!?」

「はい、これあんたのね」


腹ごしらえ、といったところかしら(飲み物だけど)

いつ口にしても彼の作ったものはお世辞抜きに美味しい。その味を隣で「こんな緩くていいの!?」と騒ぐ彼女にも知ってもらいたく差し出す


「えーと…まだ名前ちゃんと聞いてなかったわよね?」

「え?あ、ビビです…」

「うん、ビビよろしく。はい、ジュース」

「わぁ、美味しそう……じゃなくて!」


おぉ、王女がノリツッコミした

貴重な体験だわ


「いいから飲みなさいって。ずっと気張ってたら大事なところでばてちゃうわよ」

「う……」

「大丈夫よ、今はあんなだらけてるけどいざとなったらしっかり動くから」


「ね、アルト」と私の横の横、つまりビビの隣でジュースを飲んでいるアルトに声をかける

…声をかけるも、何か考えているのか半ば意識を飛ばしているアルトは、ジュースをすする音で返事を返してきた(………なんで?)

その態度に不思議に思うもあまり気にすることなく、自分の分の飲み物を口に含んだ


「ま、気楽にね」

「………そんなものかしら」

「そんなもんよ」


少しばかし表情が柔らかくなった彼女

どれくらいこの船にいるかわからないが、乗っている間は気張らずにリラックスしてもらいたい









「王女さま!」

「わっ」


静かに飲んでいたところに大きな声が

今までボケーッとしていたアルトが突然立ち上がり、ビビの手を掴んだのだ

もちろん私たちは突然のその行動に驚くが、アルトは気にすることなく言葉を続ける


「あの、あの…私弱いんです!」


いきなりの宣言……………じゃなくって、何いってんのよ

ほら、ビビもどうしたらいいかわかんなくって固まってるじゃない


困惑する私たち

それでもアルトは言葉を止めない


「弱い……けど、がんばります。私が出来ることなんて限られてるけど、王女さまが笑ってられるようがんばりますから!」


アルトの方が若干ビビより小さいので、少し見上げる形になっている

いつになく真面目で真っ直ぐな瞳でビビを見つめ、彼女の言葉を待つアルト


そんなアルトにビビは瞬きを数回した後


「…ありがとう」


アルトに負けないぐらいの笑顔を私たちに見せてくれた





さっきまでボケーッとして、心ここに在らずだったのはアルトなりに覚悟を決めてたのね

弱いだの泣き虫だの言うけど、こういった所で逃げずに…たとえ泣きながらでも立ち向かうところがアルトの強さだと私は思う


年下の二人が笑い合いながら手を握っている様子はとても和む

そんな雰囲気が海にも伝わったのか、近くで一頭のイルカが跳ねた


白いイルカが近くで

そう、近くで

近く……で

ちか……


…………………近く?





「「「「……って、デカ過ぎるわァ!!!」」」」

「うわぁぁあ!ふ、船が沈むぅぅう!!」


水平線ばかりで障害物のない海

そのせいで遠近感もおかしくなっていたらしく近くかと思っていたイルカは大分遠くにいたらしい


遠くのものが平均サイズに見えた…つまりそれは、常識じゃ考えられないほど大きいわけであって


「逃げるぞォォォオ!!!」

「「「おぉ!!」」」


危機的状況というわけになる(なんでこっちに跳んでくるのよ!)


しかしそこはあの男共。先程ビビに言ったように、やるときはやる奴ら

各自のやるべきことに取り掛かり始める





そして


「ナミさん私は何すればぶふッ!!」

「はい、ナイスシュー」

「わりぃな、アルト」



こういう状況で男共の(というかあの緑頭の)過保護が発動しないわけがない

黙って私が開けたキッチンの扉に向かって、ゾロがアルトを蹴飛ばした(状況が状況だけに扱いが雑ね)





アルトには悪いけど…あんたがいると皆集中できないのよ

何故かって?

そりゃあ、アルトが心配だから(小さいあの子がいると飛ばされちゃいそうで、ねぇ)


軽く謝りながら扉を閉め、私も船を守るべく走り出した

途中、あの緑頭の次に過保護なのって私なんじゃないか、と思い少し焦ったが……まぁ、それなりに自覚はあったので開き直ってみた





私たち+ビビ

=過保護な海賊団へようこそ



(…ていうか今思ったんだけど)(あ?)(これ乗り切った後、アルトの機嫌絶対悪いわよね)(……………)



(最悪嫌われるんじゃない?蹴ったし)(!!!)