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空気の読めない人達



山を登りきった船は、先程よりも速度をあげて下っていく

みんなと違って小柄な私はぶつかってくる風によろめいてしまう


「うわ、あ…!」

「おっと、平気か?」

「あ、兄ちゃん」


ふらつく私を支えてくれたのは、カチューシャがお似合いのルー兄ちゃん


「ありがとう!」

「気にすんな!なんたってアルトのモチモチお肌が触れゴファ!!」

「え、ちょ!?」

「あぁ、わりぃ。虫がいた」


ニッコリと笑いながら怪しいことを言う兄ちゃんの頬にゾロさんの拳がめり込んだ(も、ものすごい音がしたけど!?)


「な、なにもグーじゃなくたって…」

「勢いよく殺ったからな、仕方ねぇ」

「…て、てめっ…それは虫に対し、て…言ってんだよな……!?」

「アルト、あぶねぇから柵にでも掴まっとけ」

「おい、無視すん…なコラ」


…うん、ゾロさんがわざとやったのはわかってるよ

あえて聞かないさ


後ろで息絶えそうな兄ちゃんに謝りながら無言で柵に捕まった








まだまだ長い下り道

それでも飽きないのはこれからの冒険が楽しみだからだろう


「ん?」

「なんか、今……」

「知るかーー!行けーー!!」

「いや、まだ何も言ってないよ」

「知るかーー!行けーー!!」


……ダメだこりゃ


綺麗な金髪のメカ兄ちゃんとゾロさんが言葉を言い切る前にルフィさんは高々と手を上げ叫ぶ(テンション高いね、うん)

呆れながらメリー号の頭に乗る彼の後ろ姿を見ていたら、新たな音が聞こえてきた


「ナミさん、今なんか聞こえたよ?」

「あぁ、聞こえた」

「風じゃないの?」

「風かぁ」

「知るかーー!行けーー!!」

「ちょ…もう、うるさい!」


話の内容なんて聞きもせず同じ台詞を繰り返すルフィさんに軽く怒鳴る

背中も叩いてやろうか、なんて思いながら睨んでいたら、サンジさんが前方に何かを発見した


山、を発見したらしい


私も雲の中から先を見つめていたら、うっすらと黒い影が現れてきた


「山?そんなハズないわ」

「いや、ナミさん…あるよ」

「え?」

「……………あれは」


雲の中から抜け出した私たちは視界がはっきりとした


お陰で見えるのが



空に、雲に、海に











「ブオォォォオオォ!!!」



「く、クジラだァ!!」


私たちの目の前現れたのは、山と間違えるほど大きいクジラ

先程風と間違えた音もこのクジラの鳴き声だ


「ナナナナナナナナミさッ!ナナナナナナナ!!」

「落ち着きなさい!!」

「つったって、どうすんだよ!!」

「戦うか!!」

「ムリよ!!」

「でも進路が塞がれてんぞ!!」

「このまま行くと船大破確定だな」

「だからなんであんたは落ち着いてんのよ!?」

「人生諦めが肝心だ」

「誰かそいつを殴れ!!」


目の前の状況と、腕を組みながら長い黒髪をなびかせるカン兄ちゃんの態度に涙が溢れる


大きいクジラの横っちょに抜けられる隙間を発見したが


「舵折れてるよ!!」


ゴーン


……頭の中で鐘の音が響いた(…気が、した)


「ナミさん」

「なによ!」

「お茶、飲もっか」

「「アルトー!!」」

「おれも欲しいな」


輝かしい笑顔をナミさんに向け、親指を立てた


さぁみんな!まだ時間はあるよ!

ゆっくり飲もうじゃないか!アハハハハハ!!


「アルトが壊れたわ!早くどうにかしなさいよ!!」

「やって、んだ…よ!!」


ルフィさんとカン兄ちゃんを除く男性陣で折れた舵を持つが、メリー号が曲がる気配は全くない


「もうダメ…!!」

「ナミさん、お茶」

「ホントに入れてきたの!?」

「こういうときこそ心を落ち着かせてだな…」

「あんたは諦めてんでしょ!!」


熱々のお茶を片手にクジラを笑顔で見つめる


さーて、ルフィさんのも入れてきたんだよー

あれー?

ルフィさんはどこか…












ドウン!!!


「「「「大砲……!」」」」

「「………………」」

「…………止まった」

「ほー、ルフィ船長はなかなかな発想力をお持ちだな」


突然の大砲の暴発…ではなく、ルフィさんが大砲で船の勢いを止めたのだ(クジラに当たっちゃったけど)(ごめんよ、クジラさん!)


凄いな!ルフィさん!

意外に頭いいんじゃ……ってあれ?


なんでみんな泣いてるの?


辺りを見回した私はカン兄ちゃんと一緒に首を傾げたのだった





大砲+ピンチ回避

=バカにはわからない



(兄ちゃん、助かったんじゃないの?これって)(そうだと思うんだがな…)(……あんたらそれ、ボケ?)



(死んだ…ぜってぇ死んだ…)(あいつはなんでこう、問題ばっか起こすんだ…)(さよならおれの人生…)