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- ナノ -
だって女の子だもの



腰には刀、左手には釣竿、右手にはナミさんの手

ただ今私たちはお買い物中です


「あんた刀なんか持ってたら邪魔じゃない?」

「とっても」

「…置いてきなさいよ」

「えー」


確かに邪魔なんだけど、でも持ってたいんだよなー


なんてやり取りをしながら店へと入る

そこには見たことない、カラフルでフリフリでキャピキャピな服が沢山あった


……これ、私着るの?


ア然と立ち尽くす私をほったらかしに次々と服を持ってくるナミさん

着るのはもちろん


「はい、アルトこれ着て」


私だった(…やっぱりね、うん)


大人しく従いどんどん服を着ていく


「んー、もうちょい明るめがいいかしら」

「フリフリがくすぐったい…」



「ちょっとサイズがねー…」

「ズボンに穴空いてるよ!?」

「そういうデザインよ」



「思いきってこれなんてどう!?」

「おへそが寒い!」



「やっぱり女の子はスカートよね」

「パンツ見えちゃうよ」






「あーもう!文句が多いわねあんた!」

「えぇー!?」


思ったままの感想を述べてたら怒られてしまった


……だいたい、なんでナミさんは私に服を着せたがるんだろう


そう聞いたらさっき以上に鋭い目で睨まれた(ひぃ!)


「あんたねぇ…顔の作りが女の子よりだからいいけど、パッと見たら男なのよ!」


………そうなの?


「一番の原因はそれ!胸元のサラシ!」


ビシ!と指差され後ずさる

サラシは自分も好き好んで巻いているわけではないのだが


「ま、巻いてないと胸が見えちゃ…」

「原因その2!!」


……ナミさん、恐いよ


タンクトップの肩の部分を引っ張られ、ナミさんの顔が至近距離に


「このダルンダルンのタンクトップ」

「………は、はい?」

「こんなの着てなきゃ胸が見えるわけないし、サラシも巻かなくていいの!」

「そ、そんなにサラシはダメなの?」

「はぁ!?」


もういやー!誰か助けてー!!


ナミさんの眼力に思わず私は涙を流す(ゾ、ゾロさん以上だよ!)


「成長中の胸にこんなん巻いてたらいつまでたってもまな板よ!ま・な・い・た!分かった!?」

「は、はい…」

「だったらさっさと服探してこーい!!」

「はいぃぃい!!」


店内にも関わらず怒鳴るナミさんの元から走り出す


服を!服を探さなくては!!

サ、サラシを巻かなくてもいい服をー!


バタバタと探し回る

途中、店員さんに注意されたが……まぁ、いい(や、よくないか)(ごめんなさい!)


そしてとあるコーナーで私は足を止めた














――――……



「………はぁ」


まったく、女としての自覚を持って欲しいわ


自分好みの服を探しながらため息

あれはあれでかわいいが、やっぱり女としての生まれたのだから


なにより、胸元のサラシは前々から気になってたし


「……ま、これも私のためだと思えばいっか」


なんだかんだで新しいアルトが見れるのだから


……それに




…あのバカの為にねー


ふふふ、と自分でも分かるぐらいに不気味に笑う

少し前から様子のおかしい我が船の剣士

原因なんて考えるまでもなく……


……あぁー楽しみ!これからどうやって遊んで…じゃなくて、協力してやろうかしら


鼻唄を歌いながら今ごろ呑気にどこかをほっつき歩いているであろうやつを思い浮かべる


「ナミさーん」


そこにアルトの声


ん?服が決まったのかしら

さてさて、どんなかわいい服を……


「これがいい!」

「…………………」


振り返るとそこにはアルト

それはいいわ、わかってたもの


………でもね




なんでお魚Tシャツを持ってるの……?


キラキラと輝かしい笑顔の彼女の手にはデフォルメされた二匹の魚が仲良く並んでいた


……そりゃそうよね、アルトだもんね


自分の考えの甘さに落ち込む

彼女が自らスカートなどといった物を持ってくるわけはない


無論こんなTシャツ却下だ







…と、言おうとしたのに


「このお魚さん、私たちみたい!」


この言葉に動きが止まる


「おっきいのがナミさんでちっさいのが私。ね!私たちだ」


ズイと伸ばしてくる手

そこにあるTシャツを見つめる


仲良く、笑いながら並んでいる二匹の魚

……仲良く、笑いながら並んでいる……私たち


「……………買っていいわよ」

「ホントに!?」


お金を渡し、アルトを会計に行かせる


あの笑顔を見て断れる奴がいるのかしら






……少なくとも、私らの船にはいないわね


軽いスキップをしているアルトを見て、私は再び自分の服を探し始めた





Tシャツ+お魚二匹

=ま、いっか



(かわいいっちゃあ、かわいいから)(似合ってるしね)

(………でも、やっぱなんか許せないから私が他のを選んどこ)