それは数年前のお話
そこは東の海〈イーストブルー〉にあるとある小さな島の、数年前の出来事
「あ゛ー…気持ち悪い、飲みすぎた。酔い止めくれー…」
「ねぇよ」
「んだとー…」
「とりあえず水でも飲んで」
黒髪の男に青髪の男、そして金と黒の二色の髪の男がいた
この三人に血の繋がりはまったくなく、訳あって知り合った仲
……その話はまた今度
今回の主役は
「おはよー、みんなー」
「ん?おー!おはよう。今日もかわいいなー、お前は!」
「父ちゃんは今日もかっくいー!」
「本当か?よし、じゃあかっこいい父ちゃんがギューってしてやろう!」
「あんた二日酔いはどうした」
この、仲良し親子
男しかいないこの家で、唯一の華の娘は大事に大事に育てられた
「今日はなにすんだー?」
「隣の兄ちゃんたちと遊んでくるの」
「昼には一回帰ってこいよ」
「いっそ呼べば?」
「呼んでいいの?」
「もちろん」
愛情を注ぎながら、ときには厳しく接する
そこいらの家庭となんら変わらない幸せな一家
「そいじゃあいってきまーす」
「いってらっしゃーい」
「……ぐすっ」
「あ?なんで泣いてんだよ」
「……いや、ね!少し前まではさー、父ちゃん父ちゃん、なんて言いながらさー、ずっとさー、後ろをさー、付いてきてたのに…もう親ばなれかなー…父ちゃん悲しいなー…」
「そうか、気持ち悪い」
「右に同じく」
「……………ぐすっ」
……父の異常な娘への愛以外は普通の家庭だった
起きて、食べて、遊んで、寝て
泣いて、怒って、笑って
何事もなく太陽と月が回転していく日々
「……同じことの繰り返しで、暇なときもあった。でも、幸せだったんだよ」
口の中の煙を吐き出せば、その味も臭いも何もかも一緒なのに
"あの人"がいない
「………あの人って、まさか」
そう、簡単な間違え探し
昔と今
違うのは一つ
「急に、だよ」
「……え?」
そう、急にだ
いつも通り起きて
いつも通り話して
いつも通り暮らしてた
そんなところにやってきたんだ、やつらは
「連れてかれたんだ、リダムさんは……アルトの親父さんは
突然きた、海軍共に」
突然+海軍
=奪われた日常
(今でも思い出す)(あの日のこと)(ムカつく海軍に)(笑うあの人)
(生まれて初めて、自分の過去に後悔した)
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