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二人の答え



私の発言後、長い長い沈黙が流れた

二人の返事が気になってルフィさんたちまでもが黙りこむ


マイルさんは背中を向けていて表情が見えない

ダンさんは俯きながらタバコを吸っている


彼が口から煙を吐き、持ち上げた顔は


「……テメェは、おれが簡単に許可すると思ったのか?」


今までに見たことがないほど厳しかった


出てきた言葉は否定

しかし私は食い下がる


「でもッ、私は皆と冒険したい!」

「ダメなもんはダメだ」

「…と、父ちゃん言ってた!後悔はするな、って!」

「ここでお前を行かしたら、おれが後悔する」


…そ、んな……二人なら笑って"いってらっしゃい"って言ってくれると思ったのに!


「………おい、いいじゃねぇか。アルトが海賊になりてぇって言ってんだから」


明らかに場の空気が悪くなっていっている

私たちの様子に我慢できなくなったルフィさんが口を挟むが


「これは家族間での問題。関係ない人は口を出さないで」


……どうやら、マイルさんも反対らしい


彼の険しい顔がそう言っている


「行きたいなら行けばいい、ねぇ…そんな生易しいとこじゃねぇんだよ、お前らが行くところは」

「い、やだ!行く!皆と私は……!!」

「行ってどうすんだ?泣くのか?怯えんのか?

弱い奴は足手まといになるんだよ。あそこはお荷物抱えて生き残れる確率はゼロだ」

「!」


その台詞が胸に深く突き刺さる





……ダンさんに言われなくてもわかってた



自分がどれだけ泣き虫で

どれだけ弱虫で

お荷物で足手まといで



役にたたないかなんて













「ちょっと!」


ダン!とテーブルを叩く音

見るとナミさんが眉間にシワを寄せて立ち上がっていた


「黙って聞いてりゃなによ!アルトがお荷物?そんなわけないじゃない!」

「テメェに何がわかるってんだ!!四六時中一緒にいたのか!?何年も連れ添った仲か!?違うだろ!?」


言い争う"家族"と"仲間"

私は出てくる涙を堪えるので精一杯だった


「分かるぞ」

「んだと…!?」

「アルトはおれの仲間だ!」




「……ッ!!」


ルフィさんの言葉に胸の奥底を掴まれた気がした

ダンさんが何か言い出す前に続けられた言葉


「………海軍に捕まったとき、おれは助けられた」

「…あ?何言って、」

「懐かしいなぁ…あん時、泣きべそかきながら身動きのとれないおれを庇ってくれたっけ」


壁に寄りかかるようにして突然話し出すゾロさんに、ダンさんたちも私も戸惑う

それに続くように今度はウソップさんが立ち上がった


「お、おれも…助けられたぜ!」

「………あ゛ぁ?」

「村に海賊が攻めこんできたとき、一緒に戦ってくれたんだ」


鼻水が垂れて、涙も滝のように流れ出てくる

思い出と一緒に


「……おれもだな」

「…………」

「おれの大事なもんを奪われそうになったとき、アルトちゃんは体調がワリィのに戦ってくれた」


先程よりタバコの煙の臭いが濃くなった

きっとサンジさんが吐き出したのだろう


「私も戦ってくれたわ」

「………ッ」

「酷いことしたのに…ッ私のために傷つきながらも助けてくれたの!!」


もうこれ以上どうやって涙を流せばいいんだろう

拭いても拭いても止まることの知らないそれは、私の視界を奪っていく


唯一正常に機能している耳が聞いたのは


「お前らが何と言おうと、アルトはもう仲間だ!!連れてくぞ!!!」


うれしい、なんて言葉じゃ表しきれない言葉だった


「あのなぁ…!」

「うるせぇ!家族のお前らが何と言おうとおれは連れてく…

奪ってだって連れてくからな!!」


ぼやける視界で皆を見ると、立ち上がってるのがわかった

ダンさんは盛大に舌打ちをし、なおも文句を言おうとするが


「ダン」

「…ッ!」

「もういいだろ」


マイルさんは呑気にコーヒーを啜りながらダンさんを止める

この空気の中で微笑むマイルさんはとても綺麗だ


「アルトがここまで一緒にいたいって言うんだからいいじゃないか」

「はぁ!?お前までんなこと言うのかよ!!」

「心配なのはわかる。おれだって心配だし、本当は反対だ




……ねぇ、アルト」

「……な゛、に…?」


両手で目を擦りながらかすれ声で返事をする


「アルトは何で彼らと一緒にいたいの?」


………なんで?

………マイルさんたちじゃなくて、ルフィさんたちを選んだのは……


「………だいすぎ、だが…ら!………まだ、い…しょに、いた、い゛…!」


一緒に笑って、遊んで

戦うのは…怖いけど、みんなとなら頑張れる気がするんだ


もちろん"家族"も大好き


でもね…必要以上に甘えちゃうから


もう守られるんじゃなくて、守りたいの


「…チッ……我が儘娘が」

「うっ……ひうっ…」

「……………おい、テメェら」


私たち家族でしかわからないであろう声色の違い

さっきと違って優しくなっていた













「我が家の愛娘、死なすんじゃねぇぞ」


そう言って私の頭を撫でたダンさんに、私は勢いよく抱きついた





怒鳴る+口論

=それも愛情



(ダ…ン、さ……うわぁぁぁあん!!)(バッカ!鼻水付けんな!!)


(アルトのこと、頼むよ)(おう!任せろ!!)