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- ナノ -
悲しき定めなんです



「おい、ずりィぞアルト。サボるなよ」

「私はほ・ぼ!無関係です。ほ・ぼ!」


だから雑用する必要は、なーし!


腰にエプロンを付け、すっかり雑用となっているルフィさん


その目の前で見せ付けるようにレストランの料理を食べる私たち


…マジでうまァァア!

なにこれ!え、ちょ…うまァァア!!


もふもふとひたすら食べ物を頬張る


「幸せそうに食うなぁ……」

「気のせいかしら、あの子の周りに花が飛んでる気がするわ」

「気のせい…のようで、気のせいじゃねェな」

「どっちでもいいからくれ!」


ほっぺが落ちる、とはこのことか!うん


騒ぐルフィさんをひたすら無視をしながら食べ進む私たち

ズルイズルイ、とうるさいが悪いのは彼(が弾いた砲弾)だから仕方がない


「……あ」

「どうした?」

「魚、なくなった…」


おいしかったからなぁ…

真っ先になくなっちゃった


もっと味わうべきだったと思い、少し落ち込んでいると、私のお皿に新たな魚が


「私の食べる?」

「ナミさん!いいんですか?」

「ナミ!おれにはないの「ないわ」

「ありがとうございます!」

「…ほら、こっちもやるよ」

「おれのも食うか?」

「い、いいんですか!?」

「おれにはな「「ねェ」」……ッズリィぞ!!」


様々な魚料理

口も幸せ、心も幸せ


自分でも頬がこれでもかというくらい緩んでいるのがわかった


「いただきまー「あぁ海よ!!」ッす!?」


急に現れた金髪の男の人

驚いた私はフォークに刺さっていた魚を


「!!!!」


落としてしまった


イヤァァァア!!

ご、五秒ルールゥゥウゥウ!!


落ちた魚を慌てて拾い息を吹き掛け埃を落とす


「…アルト、諦めろって」

「そうだよ、残せって」

「嫌です!」


キッ!とべそをかきながら怒る


食べ物を粗末に扱うなんてこと、できますか!

皆さんには食べ物の大切さ、そして偉大さを知らないんだ!


ここはあれを話すしかないな……


「…皆さんに一つ、お話をしましょう」

「「「はぁ?」」」

「アルト、それくれ」

「あ!雑用テメェ、サボるな!」

「それはとある田舎の村のお話です…」

「うわ、始めたぞ…」









――――……





「ママー!今日の料理はなぁにー?」

「今日はハンバーグよー」

「やったぁ!」


ごく一般的な家庭

そこに僕はやってきた


生まれたときから僕の定めは決まっていて、人生を人の手で終わらせられてしまうのもわかってたんだ


でも、僕は後悔してないよ


だってそれが、僕の

僕らの定め


『だよね?ポテトさん』

『そうだぜ、ニンジン。それが例えおれらのように脇役でも』


僕の最初で最後の初舞台

それはこの一家の晩御飯だ


『ガハハハハ!さぁガキンチョ!思う存分喰らうがいい!』




『チッ…ハンバーグの野郎、自分がメインだからって威張りやがって』

『しかたないよ、彼を引き立てるのが僕らの仕事だし』


スポットライトの当たることのない人生

それでも僕はよかった



なのに


「うげぇ…ニンジンがあるぅ。ぼく嫌いなんだよね」

「たっくん食べなきゃダメよー?」

「はーい!


…なんて言っても食べられないよ。………そうだ!」







『うわ!』

『ニンジン!!』


「ママが見てないうちにティッシュで包んで捨てちゃおーっと」


待っていたフォークやナイフではなく、ティッシュに包まれた僕


まさか、僕は

僕は…


『ニンジン!や、やめろこの野郎!野菜だって食えよ!!』

『ポテトさん!いいんだ!』

『ニンジン…』

『いいんだよ…』


だって僕は野菜…

しかも、ポテトさんのようにカラッと揚げられて塩がかかっているわけでもない


ただ、茹でられただけの存在


タロウくんみたいな子供には嫌われる存在であるのはあたりまえじゃないか


『…ッだからって、だからって諦めるのかよ!?お前はそれでいいのかよ!?』

『ポテトさん…』

『お前もおれのようにずっと土の中で、人間に食われるのを待ってたじゃねぇか!!害虫に堪えながら、頑張っていい野菜になったんだろ!?

それをお前、諦められるのかよ!?』

『諦められるわけないだろ!!』

『!!』

『でもっ…しかたないじゃないか……ッ!!』


光も見ずに、ずっと食べられることばかり考えていた

初めは怖かったけど、でもそれが僕らの仕事だって認めた瞬間


あぁ、おいしく食べられたいな


そう思うようになっていたんだ


「ごみ箱ポーイ」

『やめろ!ニンジンッ、ニンジーーン!!』





『さよなら、ポテトさん…』










次こそは、誰かが食べてくれますように……








――――……



「……こうして、ニンジンさんは翌朝他のゴミと一緒に捨てられてしまいました………」

「「ニンジンさーん!!」」

「なんて奴だ!タロウって奴は!!」





「「・・・・・」」





「私、これを聞いたとき決めたんです!好きな物は勿論、嫌いなニンジンだって食べようと!」

「おれも!肉以外もたくさん食う!!」

「おれも野菜食う!」


私と一緒に涙を流しているウソップさんとルフィさん


やっぱりこれはいい話だ!!

ニンジンさーん!


「アルト…それ誰から聞いた?」

「え?家族から」


たしか、私が五歳くらいだったかな?


「アルト、おれはニンジンの想いを無駄にはしない」

「はい………って、魚ァァア!!」


先程落としてしまった魚が姿を消していた

辺りを見回すと、口をモゴモゴさしているルフィさんが


ま、まさか……!!


「…どう思う?」

「アルトの好き嫌いをなくすために作られた話ね」

「だな」






「ああもう!今日はなんと素晴らしき日なんだ!!」

「わ!」

「ちょ!」


ルフィさんにつかみ掛かろうとしたら、ぐい!と後ろに引かれた

引かれた方を見ると、そこには金髪のお兄さん(のもう片手にはナミさんもいた)


「片手には美しき女神!もう片手にはかわいらしきエンジェル!」

「え?え??」

「ちょっと、離しなさいよ」

「薔薇のように刺のある女神!そして、心の優しきエンジェル!
僕は君らなら海賊にでも悪魔にでも成り下がれる覚悟ができた!

しかし、僕らにはあまりにも大きな障害が!!」


エンジェル?女神?

誰のこと??


困惑しながらされるがままになっているとそこに、恐ろしい声が


「障害たァ、おれのことだろうサンジ」

「うっクソジジイ!!」

「!!」


ヤクザオーナーさん!!

こ、殺されるゥゥウ!!





ヤクザ+オーナー

=殺される!?



(助けてニンジンさーん!)(急にどうした…)


(いい機会だ、海賊になっちまえ)(な!?)(この店にはいらねぇ)