危険な香りしかしない
「ぅえっへっへっへ……」
「………………」
「むふ、いひひっ」
「……………………」
「ふっ、へっへっへ、うへへー」
「…………アルト」
「んふっ?」
「笑い方が気持ち悪い」
「ぬあ…!?」
ダンさんたちが記事になっている新聞を眺める
彼らが元気でやっていることに嬉しくなり、だらしなく頬を緩ませているとナミさんから「気持ち悪い」の一言をいただいてしまった(ひ、ひどい!)
そのとき思わず新聞を握り締めてしまい、急いでシワを伸ばす
「そこの部分だけ切り取ったら?」
「あ、王女さま!」
「ノートか何かに貼っといたら綺麗に持っていられるんじゃないかしら」
綺麗な水色の髪を揺らしながら新聞を覗く王女さま
彼女のアイディアに手を叩きながら賛成する
「あ、そうだ!王女さまは知らないですよね?この新聞に写ってる人たちは私の家族で……」
「え、えぇ」
私のマシンガントークは、ナミさんの拳骨が落ちるまで続いた(だって自慢の家族だもん!)
「ん、おい!島が見えてきたぞ!」
上から海を見ていたウソップさんの声が辺りに響く
彼の指す方向には確かに島があり、ナミさんの確認によりあれが私たちが上陸しなければいけない島ということがわかった
ふふふっ、見ててねみんな!私もがんばるから!
「ミス・オールサンデーの言葉が気になるわ。気を付けないと」
「そうね…」
「お前ら、上陸準備だぁあ!!」
「イヤッフゥゥウウ!!」
「高い高い高い!あの二人のテンションが高い!」
「……アホ二人、あんたら単独行動だめだからね」
「「冒険だぁぁあ!!」」
「……ダメだありゃ」
ルフィさんと肩を組みながら手を空に突き上げる
周りの呆れた視線に気づくことのない私たちのお祭り騒ぎが止まることはなかった
「………もう、うるさいっ!」
「「いだっ!!」」
今さっきまでテンションMAXだった私。しかし島の河口に船が入った瞬間そんなものはなくなってしまった
「…………帰りたい」
「さっきまでの勢いはどうした」
垂直に下がるテンション
横で目を輝かすルフィさん尻目にゾロさんの背中にへばりつく
私のテンションが下がった理由、それは
「おっ!でっけぇトラがいる!」
「「ひぃぃいぃい!!」」
到着した島があまりにも危険な香りを漂わせているから(うひぃぃい…!)
まるでジャングルのようなそこは、島の中に行かなくても十分に怖い
べそべそと泣きながら彼の背中に顔を押し付けた
「おい、鼻水付けんなよ」
「う゛うぅ…!」
そんなこと言わないでよ……ものっすごく怖いんだから
「サンジくん、おれもへばりつきたい。背中いい?」
「ナミさんとビビちゃん、そしてアルトちゃん以外は受け付けねぇ………つーわけでアルトちゅわぁぁあん!おれの背中……いや、腕の中にぃぃい!!」
「黙れエロ眉毛」
………………なんか、みんないつも通りだね
いや、安心するよ、は、ははは
ほろり、と涙を流しながら軽く笑う。島の雰囲気がいつものみんなの和む?ようなやり取りに多少打ち消されていた、そのとき
ドサ…ッ!
「な…ッ!トラが…ッ!」
ナミさんの声に反応し、そちらに視線を向ける。そこには先ほどのトラが血を流しながら倒れていた(何ごと!?)
密林の王者であるトラがこんなになるなんて普通じゃない
ナミさんとウソップさんが騒ぎ、私もあまりの恐怖に体を固まらしていると今度は背後から気配が
今まで聞いたことのない鳴き声を発しながらメリー号すれすれを通っていったそれに、私は泣き叫びながらそこから走り出す
たまたま目の前にいたサンジさん目掛けて
「怖いぃぃいぃい!!」
「アルトちゃんが!お、おれの胸にとびっ…飛び込んで来たぁぁあ!!」
「た、大変だ!サンジの顔がいつも以上に気持ち悪くなってやがる!」
何も見たくない聞きたくない、そう繰り返し呟きながらサンジさんに回している腕に力を込めると、頭上から「幸せすぶふうっ!!」なんて意味のわからない言葉と液体が降ってきた(それを確認する余裕すらないけどね!)
「サンジ!鼻血が…鼻血が垂れてんぞ!?」
「………………」
「…って、ゾロおまっ!無言で刀抜くな!」
「……いつもこんな感じなの?」
「えぇ、そうよ。……ゾロ!死なない程度でお願いね!」
「ナミさん!?」
あぁ、本当にいつも通りだ
てか、サンジさん
まさかこの首に落ちてきたものは、はな…
「なぁなぁ、アルトっ」
「……う?」
ルフィさんに呼ばれ、ちらりと視線を動かす
そこには今まで見た中で一番といってもいいほどの輝きを持った笑顔を向けている彼がいた
「冒険、行こうぜ!」
…わぁ!何言っちゃってんだこの人は!
ルフィさん+笑顔
=お断りします!
(いぃぃやぁあだぁぁあ!!)(んでだよー、行こうぜ!なっ?)(NO!)
(…ルフィさん、スッゴいいい笑顔)
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