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ちょっと待てい!!



なんでこうなった…


「早く助けに行きなさいよ!」

「イ・ヤ・だ!テメェが勝手に約束したんだからテメェで行け!」


なんだかよくわかんねぇ他人の揉め事からルフィを無事に回収したと思ったら、巻き込まれた

しかも戦いに、とかではなく面倒事にだ(戦いの方がどんなに楽だったか…)

おかしな能力を持つ男にやられた巻き髪のオッサンに足を掴まれ、王女を助けてくれ、なんて……嫌に決まってんだろ!

……それなのに


「大金が手に入るチャンスなのよ!?」

「だーかーらー…自分で行けっつってんだろ!?」

「嫌よ、怖いもの」

「ふざけんな!!」


この金の亡者が…!


いつ起きて、いつからいたのか…爆睡していると思っていたナミが悪い顔してそこにいた

そしてこのオッサンの"王女"という言葉の反応し、助けるから10億ベリー出せ、と笑顔で言いやがった


さすがは元泥棒、金のためなら血も涙もないことを……いや、まぁ、それはいいさ、別に


でもよ


「いいからさっさと行きなさいよ!」

「だから断るって言ってんだろ!」


なんで王女助けをおれにやらせようとすんだよ!


「私のお金は私のもの、私の契約は一味全員の契約!」

「黙れ!どんな理屈だそれは!」


真顔で当然のことのように言うナミにもちろんおれはキレる


どんな風に言われてもおれは他人なんかにゃ使われねぇぞ!


そういう思いを込めて睨んでいたら









「おまかせあれ!」

「だ、誰だ!?」

「「……………」」


この場にいないはずの声が響き渡った


それに驚くオッサンと動きを止めるおれとナミ

聞き覚えのあるその声におれらはおもいっきり顔を歪ませた(まさか、)


「話は聞かしていただきましたぞっ、その願い私が聞き入れたァア!」

「だ、誰なんだ!姿を見せろ!」


やめろ、盛り上がるな

気づいてくれ、お前らとおれらの温度差


額に手をあてながら大きいため息を一つ

そして声がした方に視線をやれば、家の窓で仁王立ちしている影が一つあった

それを見て今度は頭痛がした、気がする


「月から現れし正義のヒーロー、"ムーンプリンス"!とうっ!」


カッコつけんな馬鹿が

一階の窓から飛び下りたってスゴかねぇんだよ


ふふん、と得意気な表情で着地したのは…我が船最年少のアルト

しかも頭に鍋を被り、顔には星形のサングラス、手にはおれが飲んだ酒瓶を持っている

本人がカッコいいと思っているかはわからない(多分、)(いや絶対カッコいいって思ってるな)が、後ろでバタバタとはためかせている花柄のマントが鬱陶しい


……どこで手に入れた、その一式


「ム、"ムーンプリンス"だと!?」

「左様、そなたの助けを求める声、月まで届いたぞよ」


ぞよ、って誰だ



……つーか、


「何してんのよ、アルト」

「ノンッ、私は月の王子"ムーンプリンス"!満月の夜に現れる正義のヒーロー」

「今日満月じゃねぇぞ」

「…………月があればOK!」


OK!…じゃねぇよ!馬鹿か!?


頭を力の限り叩いてやりたいが鍋が邪魔をして叩けない

とりあえずこれ以上馬鹿なことをしないよう押さえ込もうとしたら


「とにかく!私はプリンセスを助けに来たのだ!何故かって?それは私がプリンスだから!

てことでそこの方、あとは私におまかせをォォオォ!!」

「「まかせられるかぁ!!」」

「お願いしました!」

「テメェもお願いすんな!」

「うおぉぉおぉおぉ!!」

「ちょ、アルト帰ってきなさーい!」


間抜けな後ろ姿を大声で引き止めるが無駄に終わった

足の早いアルトはもう見えない


………あ、やべぇ

なんかこめかみ辺りが痙攣してきた


はは、と渇いた笑いをこぼしながら腰の刀を抱える




十数分前、一世一代…と言ったら大袈裟かもしれないが、あいつに対してそれぐらいの決意をした


…したが、んなもん関係ねぇ


「ゾロ」

「なんだ」

「王女の件はついででもいいから、あのお馬鹿殴ってきて」

「おぉ」

「つねるんじゃダメよ、グーで殴るんだからね」

「まかせろ」


そのときのおれの顔は相当怖かったのだろう

倒れてるオッサンから小さな悲鳴が聞こえてきた





おれが今まで出会った中で最も馬鹿な部類に入るであろうアルト

そんな奴でも、大切にしたいという気持ちがあるのは事実なんだ


だからよ

今からお前を殴りに行くが、暴力じゃねぇ



これからやりに行くのは、あれだ





「二度と馬鹿なことしねぇように、躾てやるよ…!」


額に青筋を浮かべたおれは全速力であの馬鹿の後を追った





プリンセス?+プリンス?

=そんな馬鹿には愛ある拳を



(プリンセス!今助けますぞぉぉお!)(む、無駄に早いな…!)



(……そういえば結構なメルヘン思考だったわね、あの子)