そっちが言ったくせに!
島に入ると人がどんどん集まってくる
それも、私たちを歓迎しながら
そんな風に喜ばれて嫌がる人なんてそうそういない
「おぉー、歓迎されてんぞ!」
「やっぱ海賊ってのはヒーローなんだよ!」
「そうかぁ?……あ!あの娘クソかわいい!」
ルフィさん、ウソップさん、サンジさんの三人は島の人たちに笑顔で手を振り返す
それを見て私も手を振ろうと船から体を少し乗り出した
「こんにち、うわぁ!?」
乗り出したが、急に首に腕を回され後ろに引っ張られた
驚きながら自由の効かない首をなんとか後ろに回すと、眉間にシワを寄せながら話し合うゾロさんとナミさんが(因みに私を掴んでいるのはゾロさん)
「どう思う?」
「どうって…怪しすぎるだろ」
「よねぇ……と、いうわけでアルト」
「は、はい?」
「あの三人みたいにバカしてないで警戒してなさい」
あの三人、とは島の人たちに手を振ったり投げキッスをしたりしている、あの三人のこと
……しかし、なんでそんな警戒する必要が?
困惑気味に二人を見上げたら深いため息を吐かれた
「…………お前、普通海賊きてこんな風に迎え入れるか?」
「うっ…」
「なにか理由があるに決まってるの、しかもきっと面倒な理由がね」
い、言われてみれば…
で、でも!直ぐ人を疑うのはよくないって!
「じ、実はこの島の人たちは物凄く強い、とかかもよ?だから海賊がきたくらいどうってことない、なんて…」
「だったら尚更だろうがっ」
「うぐ!」
キュッとゾロさんが腕に力を入れる
もちろん、私の首がより締め付けられましたよ
「そう思うなら警戒しろって言ってんだよ、アホ。もしかするとおれらを油断さして、背後から刺してくるかもしれねぇだろ?」
「!」
「おれらは海賊なんだ、そこんとこ頭入れとけ」
そ、そうだ…私たち海賊だ
そんな私たちを普通こんな風に歓迎してくれるはずがないよ
危なかった…と胸を撫で下ろしながら船の外を見回した
あの人たちはもしかすると物凄く強くて、そして私たちを狙ってるかもしれない………
そう疑ってろってことだね!ナミさん、ゾロさん!
ありがとう!
教えてくれなかったら私もあの三人みたいに大喜びしてたよ!
………………って、感謝してたのに
「酒もっと持ってこーい!アハハハハ!」
「………うっぷ!まだまだいけるぜ?こっちは」
……………ッふ!た!り!の!バ!カ!
あのあと島に降りた私たちは、髪の毛がスゴく巻き巻きしてる人に宴をしようと言われ、半ば無理矢理だったが酒場に連れてこられた
これはこの人たちの策略!と目をギンギンにしながら私は警戒していたのに…
「おれはなぁ、巨大な海王類に…」
「のっほっほっほ!みんな可愛いなぁ!」
「おかわりぃ!」
なんだこれは!なんだこの状況は!
騒ぎまくるみんなを見て、持ったコップにピシリッとヒビが入った…ら、いいなぁ(そんな力ないしなぁ……)
でも、怒っているのは変わりない
…………特にそこの二人にだよ!バカァ!
他の三人のバカ騒ぎはわかる、だってこの島の歓迎を喜んで受け入れてたし
でもナミさんとゾロさん…あなたらはあんなに警戒してたじゃないッスか!
それなのに、それなのに……!
「お嬢ちゃーん、そんな端にいないでこっち来なよ」
「い、いえ…私部屋の隅っこ大好きなんで」
私に恐怖心植え付けるだけ植え付けてなに楽しんじゃってんのさ!
思わず溢れそうになった涙を堪えながら顔を膝に埋めた
先程の二人との会話のせいで島の人たちになにされても疑ってしまう
ご飯だって食べたいのに……毒が入っていたら!なんて考えてしまう(すごい失礼だけど…)(わかってるんだけど!)
………ふんだ、ふんだ!ふんだ!ふんだ!!
もういいし、楽しめないなら寝るし!
お腹、空いてるけどいいし!!どうせ恐くて食べられないから!
「みんな嫌いだっ」
ズビッと我慢できずに垂れてきた鼻水を啜りながら私は寝たのだった
…………ふーんだ!
警戒しろ?+警戒しなさい?
=…とっても楽しそうデスね!!
(おーい、お嬢ちゃん?)(あらら、寝ちまったぞ)(この子、全然飲んでないのにな)
(………みんなの、ぶわぁーか…ッ!)
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