朝っぱらからナミに手渡された一冊の本 "あなたの恋を手助けしちゃう!マル秘恋愛マニュアル〜初級編〜" ………遠く彼方に投げることは許されるだろうか(なにこれ、気持ちワリィ) 優しい薄ピンクと目が痛くなるような蛍光ピンクで"恋愛"をアピールしてくるこれ。きっと今この姿を見たら、あいつらは二度見をするだろう(なんせおれがこんな本を持っているんだから) いっそ捨ててしまいたい でも、捨てるとこれを渡してきたあいつがうるさいのでそれは出来ない。いや、出来るがめんどくさいことになる 仕方ねぇ、とりあえず…読むか 適当に飛ばし読みぐらいしときゃあ大丈夫だろ 他のやつらにこんな本を読んでいるところを目撃されないよう祈りながら、テンションの上がらない表紙を捲った ―好きな女の子に声をかけることも出来ない、そこの緑のキミ!― おい、どういうことだ。どうして特定されてんだ いや…声は普通にかけられるぞ ―マジで(笑)― 笑ってんじゃねぇよっつーか何で会話になってんだ、これ 著者が事前に想定したってか?天才かよ 冒頭の文でもうこんな調子だ。たぶんこの先を読んでも何一ついいことはないだろう 静かにゆっくり本を閉じ、力一杯遠くに投げた ナミのやつがうるせぇが…もうそれでいい、そっちを我慢する あんなくだらない本を読むよかマシ そう結論が出たおれはそのまま寝る体勢に入る(嫌なことがあったときにゃあ、寝るのが一番) 「およ?本が落ちてる」 穏やかな気候が手伝い直ぐにでも寝れそうだ …………おい今誰が何て言った? 「あなたの…"へん"?」 「…………まぁ、似てるっちゃ似てるがよ。というか捨てろ」 なんでお前が拾っちまうかな 重力に従い下がる頭。興味津々に本を眺めているところ悪いが、さっさと捨てて欲しい。「似てる?…あ、これ"こい"だったね!」いや、それもそうだがさっさと捨てて欲しいんだって そんな願いも虚しくアルトは表紙をめくる(だぁかぁらぁ…ッ!) それらしい理由を付け気色悪い本を取り上げようと体を起こす しかし、そこでふと思う …別に内容は平気じゃねぇのか? 表紙、冒頭の文は確かにアウトだ。だが、もしかすると内容はしっかりしているかもしれない そしてそれを読んだアルトは、恋愛の"れ"の字ぐらいは理解する(…と、こっちとしては嬉しいんだがな) そんな淡い期待を込めて、本に視線を向けるアルトを見ていたのだが 「"鈍いあの子に意識してもらうにはAもBもすっ飛ばしてCをしてしまうのが一番!そうすれば相手の子の頭からは君のことが消えないよ"」 「ちょっと寄越せ、それ」 「あ」 見た目が見た目なら中身も中身。そろそろ血管の一つや二つぶちギレそうになるのを堪えながらアルトの手の中から無理矢理奪った なにが恋愛マニュアルだよ、おいコラ なんか少しそれっぽくいってるけどただの犯罪じゃねぇか 「ゾロさーん、まだ途中だよ」 「うっせ」 「AとかBとかCってなに?」 「黙れ」 「…………」 ふてくされるな。これはダメなんだって、お前には 下唇を突きだし、あからさまに不機嫌オーラを出すアルト どうせ捨てるならしっかりと海に投げ捨てろよおれ、なんて少し前の自分を責める  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 読み返しも大してしてないからおかしいとこいっぱいあります、きっと とりあえずボツ作品でしたー |